ElevationSpace、宇宙環境利用回収衛星「ELS-R」初号機の打ち上げを2026年以降に

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ElevationSpace、宇宙環境利用回収衛星「ELS-R」初号機の打ち上げを2026年以降に

2024.04.01 17:22

UchuBizスタッフ

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 東北大学発スタートアップElevationSpace(仙台市青葉区)は4月1日、開発する宇宙環境利用・回収プラットフォーム「ELS-R」初号機(愛称「あおば」)の打ち上げ時期を2026年以降に変更することを明らかにした。これまでは2025年としていた。

 衛星を構成する部品の中で外部から調達しているものがあるが、一部の調達に遅れが発生したことで衛星全体の開発スケジュールが変更となった。

 同社が進めているELS-Rは、運用が終了する国際宇宙ステーション(ISS)の2030年以後を見据えて、顧客企業から預かった貨物(ペイロード)を搭載し、ロケットで打ち上げ。地球低軌道(LEO)上でオペレーション実施後、大気圏を燃え尽きずに通過して、回収カプセルが地球に帰還し、最終的にペイロードを顧客企業に返却するというサービスになる。

 ELS-Rの場合、ペイロードを搭載して宇宙空間で実証、実験して地球に帰還するという通常の人工衛星にはない機能を搭載するため、一般的な衛星開発とは異なる技術が多数必要になると説明する。特に、固体の燃料と気体や液体の酸化剤による「ハイブリッドスラスタ」のように軌道を離脱するための制御や推進の技術は世界的にも前例が少なく、非常に難しい技術と解説する。なお、ハイブリッドスラスタは原理の実証や基本設計の検証はすでに実施している

 回収カプセルもまた世界的に前例が少ない、非常に難しい技術と説明。大気圏への再突入では、数千度という高温に晒され、大抵の物体は燃え尽きる。ELS-Rの回収カプセルは燃え尽きずに、ペイロードを損傷させずに地上で回収する。こうした技術は難易度が高いという。大気圏の再突入と回収に成功している民間企業は世界的にもほとんどないとしている。

 同社の説明によると、再突入・回収技術を持っている国は米ロ中日の4カ国しかないという。小型衛星の制御、再突入、回収を行っている国は日本のみとしている。

再突入技術の国別習熟度(出典:ElevationSpace)
再突入技術の国別習熟度(出典:ElevationSpace)

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、ISSへの物資補給機「H-II Transfer Vehicle:HTV」(愛称「こうのとり」)を開発。2009~2020年に運用していた。2018年に打ち上げられた、こうのとり7号機には、HTV搭載小型回収カプセル(HTV Small Re-entry Capsule:HSRC)が搭載。HSRCは宇宙からの物資回収技術の実証に成功した。

 ElevationSpaceで現在、最高技術責任者(CTO)を務める藤田和央(かずひさ)氏はJAXAで数多くの再突入・回収プロジェクトに参加しており、大気圏突入から着陸、回収の技術開発をプレイングマネージャーとしてリードしていたという。同社はLEOを周回する拠点からの高頻度再突入・回収事業でJAXAと共創活動を進めている

 ElevationSpaceと同じ時期に創業したスタートアップ企業は複数あるが、再突入・回収に成功した企業は1社だけという。国内で無人小型衛星を活用した、ELS-Rのような宇宙環境利用・回収サービスに取り組んでいる企業は存在していないと説明する。

競合比較(出典:ElevationSpace)
競合比較(出典:ElevationSpace)

 初号機のあおばは、軌道離脱や大気圏再突入、回収といった技術を実証することが目的の技術実証機。だが、IDDK(東京都江東区)の小型バイオ実験環境とユーグレナ(東京都港区)の微細藻類培養環境をペイロードとして搭載するほか、他社の宇宙機用小型推進システムや宇宙転用を目指す車載コンポーネントなども実証する。

 あおばのペイロード搭載量は積載可能上限に達しており、搭載枠の販売はすでに終了。ELS-Rに対する需要が高いことから、初号機より大型のサービス機となる2号機の搭載枠はすでに募集が始まっている。2号機の打ち上げは2026年を計画しているが、初号機のスケジュール変更から2027年以降を想定している。

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