鳥取砂丘に月面実証フィールド「ルナテラス」完成--月面想定した実証実験が可能

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鳥取砂丘に月面実証フィールド「ルナテラス」完成–月面想定した実証実験が可能

2023.07.10 12:28

飯塚直

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 鳥取県は7月7日、鳥取砂丘月面実証フィールド「ルナテラス」と建設技術実証フィールドが完成したと発表した。

 鳥取砂丘月面実証フィールドのルナテラスは、鳥取県の産業の成長軸のひとつとして、宇宙産業を創出するために取り組む「鳥取砂丘月面化プロジェクト」の一環として整備。屋外の月面実証フィールドは日本初という。面積は約0.5ha。

 鳥取砂丘の現地(国立公園外)にある砂をそのまま活用し、月面環境を想定した実証実験を行うための「平面ゾーン」、5~20度程度の「斜面ゾーン」、利用者が自由に掘削、造成できる「自由設計ゾーン」で構成されている。

 「Artemis」計画など、月面探査に参画する国内外の企業や研究機関による実証実験の拠点化を目指しているという。

 建設技術実証フィールドは、鳥取県の基幹産業である建設産業について、先進技術の導入による生産体制の革新と、それを担う人材育成、生産性の向上を目指す企業支援を行うために整備したものと説明する。

 3次元測量設計やICT建機操作、県内企業の技術研修などでの利用を想定。面積は約0.5ha。

 今後は、完成した鳥取砂丘月面実証フィールド/建設技術実証フィールドを拠点に、さまざまなイノベーションに関連した話題を全国に提供していく予定としている。

 両フィールドのオープニングセレモニーが7月7日に開催。各フィールドを利用したデモンストレーションも披露された。

 ルナテラスでは、ブリヂストンが月面探査車向けタイヤの走行試験を実施した。大気がなく、120℃から-170℃まで変化する月面環境では、ゴムや樹脂が使えないため、スプリング構造の金属性タイヤを試作した。ブリヂストンは、鳥取大学乾燥地研究センターの協力を得て、鳥取砂丘で電動の計測車両を用いた実証試験の実績があるという。今回、鳥取県内企業との協業で牽引式走行試験も新たに開始した。

ブリヂストンによる走行試験(出典:鳥取県)
ブリヂストンによる走行試験(出典:鳥取県)

 ルナテラスでは、ARES Projectが惑星探査機(ローバー)を走らせた。ARES Projectは、火星ローバーの学生世界コンテスト「University Rover Challenge(URC)」に日本チームとしての出場を目指している。東北大学、慶應義塾大学、東京大学,筑波大学の学生が所属している。

ARES Projectの火星ローバー(出典:鳥取県)
ARES Projectの火星ローバー(出典:鳥取県)

 建設技術実証フィールドでは、WorldLink & Company(京都市北区)のグループ事業であるSkyLink Japanがドローン自律飛行を実演。高橋脚(ハイピア)など近接目視が困難な橋の点検に活用されている自律型ドローンが飛行した。このドローンは障害物を自動で回避するという。

SkyLink Japanの自律飛行型ドローン(出典:鳥取県)
SkyLink Japanの自律飛行型ドローン(出典:鳥取県)

 建設技術実証フィールドでは、鳥取大学とみるくる(東京都渋谷区)もドローンレーザーを実演してみせた。ドローンに搭載したレーザースキャナーのデータを地上で受信し、リアルタイムに3次元化処理した映像を大型ディスプレイに映しながら、ドローンレーザーを使った3次元測量技術が紹介された。

 地元鳥取市のアイコンヤマトは、整備完了後の実装フィールドの3次元地形データを事前に取得しておき、3次元CADで描写した点群データを大型ディスプレイに映しながら、3次元データを活用した業務プロセスの効果を実演してみせた。

 テクノレンタル(東京都足立区)とコマツカスタマーサポート(東京都港区)は、事前に作成した3次元施工データを、IT化された建設機械に入力し、3次元データを活用した施工を実演。建物の位置を正確にする作業が不要になるとメリットを解説した。

3次元データを活用した施工を実演(出典:鳥取県)
3次元データを活用した施工を実演(出典:鳥取県)

 NSW(東京都渋谷区)とユビテック(東京都港区)を遠隔臨場を実演。事務所にいながらスマートグラスやウェアラブルカメラを活用することで現場状況をリアルタイムに把握できるという遠隔臨場の取り組みを紹介。通信ネットワークを活用したバイタルデータのチェックなど作業従事者の健康管理をはじめとした労働環境改善の取り組みも披露した。

現場の状況をリアルタイムに把握できる遠隔臨場(出典:鳥取県)
現場の状況をリアルタイムに把握できる遠隔臨場(出典:鳥取県)

 今回、鳥取県と鳥取砂丘月面実証フィールド/建設技術実証フィールドの土地を保有する鳥取大学の2者で「鳥取大学と鳥取県との鳥取イノベーション実装事業」に関する基本協定を締結した。

 同協定は、各フィールドを主な拠点として、宇宙分野や建設分野をはじめ、鳥取県での新産業創出や県内産業の高付加価値化を目指すものという。

 鳥取大学は、ポストコロナの社会変革を見据え、浜坂キャンパス(鳥取市)を大学や企業、自治体の連携拠点とする「とっとり浜坂デジタルリサーチパーク構想」を計画。デジタルリサーチパーク構想の策定をきっかけとして、鳥取砂丘西側エリアの広大な敷地に技術検証のためのフィールドを整備する検討を鳥取県と開始した。

 浜坂キャンパスのさらなる活用を検討する際、宇宙産業創出に向けた「鳥取砂丘月面化プロジェクト」の活動拠点としても最適な場になると考え、合同プロジェクトを開始。2021年12月にフィールド整備に着手し、2023年6月末に完成した。

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