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JAXA、「低騒音プロペラ」の静音効果を確認–国産ドローンのACSLと共同開発
2023.03.16 18:07
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は3月16日、国産産業用ドローンを開発するACSL(東京都江戸川区)と低騒音プロペラ「Looprop for SOTEN」を共同開発し、その静音効果を確認したと発表した。
低騒音プロペラ「Looprop」は、JAXAが静音を目的に独自開発したループ状(8の字状)をしたプロペラ。4枚羽の翼の位置を寄せて、先端のカーブを繋げた形状をしている。
今回、低騒音プロペラ「Looprop」の設計手法の高度化に関する共同研究において、国産ドローン「SOTEN(蒼天)」に搭載する低騒音プロペラ「Looprop for SOTEN」を共同で開発した。
国産ドローン「SOTEN(蒼天)」は、経産省所管の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の採択事業(安全安心なドローン基盤技術開発)として、ACSL、ヤマハ発動機、NTTドコモ、ザクティ、先端力学シミュレーション研究所の5社によって開発された小型空撮用ドローン。2022年より出荷を開始している。
なお、「Looprop for SOTEN」の共同開発においては、先端力学シミュレーション研究所などが協力しているという。
昨今、ドローンの利用は、物流や警備など、社会の基幹インフラへの導入が現実的になっている。従来では飛行禁止となっていた市街地や住宅の上空も飛行できる制度(レベル4:無人航空機の有人地帯における目視外飛行)の整備が進められており、ドローンがますます、日常の生活に密着していくと予測されている。
しかし、レベル4の社会においては、市街地など人間の生活圏をドローンが頻繁に飛行することから、ドローンの静音性が重要な課題のひとつとなっている。
そこで両者は、レベル4社会の「音」の課題を解決するべく、「Looprop」を「SOTEN(蒼天)」向けに最適化設計した「Looprop for SOTEN」の試作品を共同で開発した。
最適化設計により、従来型プロペラ(現在のSOTENのプロペラと同形状)との比較において、同等の推力を維持したまま静音化を達成。人の不快感が軽減されたことを確認したという。
また、屋外での効果検証飛行試験の結果は、通常の2枚羽プロペラとの音圧レベルの比較で、最大で2.3 dBA音圧が低下(音圧エネルギー換算で41%減少)したことを確認。音質も耳障りさの主因である倍音成分によるプロペラの特徴的な音が減少し、より自然界の騒音の音質に近くなる性質と相まって、全体の静音性が向上しているという。
両者は、今回の成果をもとに、レベル4社会に向けた研究開発を進めていくとしている。