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ソニーなど開発の部屋着や肌着、ISSに2023年以降に搭載予定

2022.09.15 07:00

飯塚直

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 宇宙航空研究開発機構(JAXA)の新事業促進部は9月14日、新たに選定した宇宙生活用品が2023年以降国際宇宙ステーション(ISS)に搭載予定であると発表した。

 JAXAでは、2021年8月2日~9月30日に宇宙生活と地上生活に共通する課題を解決する生活用品アイデアを募集。応募された65件のアイデアの中からISS搭載に向けた開発フェーズに進む9件のアイデアを選定していた。

 選定したアイデアについては、2021年11月以降、選定企業による宇宙仕様への改変や宇宙飛行士によるプロトタイプの確認などを実施。今回、2023年以降にISS搭載予定の開発品に対し、安全性や搭載性などの観点から総合的に評価する搭載可否を判断した。

 搭載可と判断されたのは、健繊(東京都新宿区)が開発する「HIDAMARI SPACE DRY-WEAR」と「HIDAMARI Qomolangma 8848」、スタイレム瀧定大阪(大阪市浪速区)とソニーグループが開発した「Triporous:Space QOL Seriesリラクシングウェア」。

(出典:JAXA)

 健繊が開発した肌着は、同社の「ひだまり」がベース。ひだまりは、全繊維中最高級という保湿力や速乾性、透湿性に優れているとする「ダンロン」と呼ばれる特殊な繊維を活用、ダンロンは熱伝導率が小さく、肌側に使用することで外気の影響を受けにくく、体温で温められた暖気を逃がさない「魔法瓶」効果で保温力を高めるとしている。

 ISSに搭載可となったHIDAMARI SPACE DRY-WEARは、薄手の鹿の子織り二重構造編地を採用と説明。汗を肌側から外側へ吸い上げる製品のため、不快な汗問題の解決に向けて薄手の編地にしており、運動時に使用されることが期待されるという。

 編地の表面には、銀イオンを保持したアクリル原綿と綿を混紡することで抗菌性能をもたせた特殊な糸を使用。宇宙滞在時の臭い問題も解決することを目指している。

 HIDAMARI Qomolangma(チョモランマ) 8848は、エベレスト登山隊でも実証されているという編地を使用。宇宙飛行士を冷えから守ることを目指している。睡眠時に寝汗をかいても「汗を肌側から外側へ吸い上げる」ため、ISS内でも快適な着心地を保つことが見込まれるとしている。

HIDAMARI SPACE DRY-WEARとHIDAMARI Qomolangma 8848(出典:健繊)
HIDAMARI SPACE DRY-WEARとHIDAMARI Qomolangma 8848(出典:健繊)

 スタイレム瀧定大阪とソニーグループが開発したのは、世界中で年間約1億トン以上排出されている米のもみ殻から生まれた多孔質カーボン素材である「トリポーラス」を繊維に応用することで消臭や抗菌効果があるという部屋着。部屋着以外の肌着やタオル、ポーチは2024年以降の搭載を目指して開発を進めているとしている。

Triporous:Space QOL Seriesリラクシングウェア(出典:ソニー)
Triporous:Space QOL Seriesリラクシングウェア(出典:ソニー)

 搭載可と判断された生活用品は、打ち上げに向けた準備を進め、2023年以降にISSに搭載される予定。2024年以降にISS搭載予定の開発品(6件)に対する搭載可否判断については、2023年7月以降に実施予定だという。

 JAXAの新事業促進部などが中心となって進めている新事業創出プログラム「JAXA宇宙イノベーションパートナーシップ(JAXA Space Innovation through PARtnership and Co-creation:J-SPARC)」の一環である「THINK SPACE LIFEプラットフォーム」は、事業創出を促進するインキュベーションやコミュニティー活動を通し、引き続き応募企業、選定企業を後押ししていくとしている。

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