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IHIとICEYE、最大24機のSAR衛星網構築で協力–日本で共同運用、製造拠点も日本に

2025.05.23 14:15

UchuBizスタッフ

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 IHIICEYEは、最大24機の合成開口レーダー(SAR)衛星のコンステレーション構築で協力していくことで合意した。防衛イベント「DSEI Japan」で5月22日に覚書(MoU)を締結した。

 IHIとICEYEは、SAR衛星コンステレーションを日本国内で共同運用するとともに、コンステレーションを構成する衛星の製造拠点を国内に整備することを計画している。国家安全保障とレジリエンスを強化することに加えて、日本の宇宙産業をより活性化し、その発展を促進することを目的としている。

 地政学的な不安定性が高まる中、すでに顕在化している、または新たに発生し得る課題に対応するため、日本政府は安全保障能力強化への投資を進めている。IHIは、ICEYEとのパートナーシップで構築されるSAR衛星コンステレーションが、衛星地球観測での主権能力の強化を通じて、日本政府が目標とする、敵対勢力のレーダーに加えて、対空や対艦などのミサイルの脅威の射程外から攻撃できる「スタンド・オフ防衛」能力の実効性を確保することにも貢献できると考えている。

 SAR衛星は、観測やリモートセンシング用に必要な高精度データを提供できると説明。天候や昼夜に関係なく、マイクロ波で地上の高解像度画像を生成する。気候変動の分析や船舶追跡を含むさまざまな用途で信頼性が高く継続的な監視が可能とIHIは説明する。ICEYEは、SAR衛星で高度な技術力と多くの製造実績があり、高機能かつ長寿命のSAR衛星を量産する技術で世界をリードしているという。

 IHIは、衛星コンステレーションの整備を主導する。最終的に、このコンステレーションは、光学センサーや電波収集(RF)、赤外線(IR)、VHFデータ交換システム(VDES)、ハイパースペクトルを含む複数種類の衛星を追加する構想で、陸上や海上での作戦活動に必要な目標検出、追跡能力を提供することを目指している。

 VDESは、海上で自船の位置などを通報する装置として普及が進んでいる「船舶自動識別装置」(AIS)を拡張し、船舶・海洋を対象に双方向通信でネットワークを構築することを目的としたシステム。IHIはアークエッジ・スペース(東京都江東区)やLocationMind(東京都千代田区)と連携してVDES衛星を活用した海洋状況把握(Maritime Domain Awareness:MDA)の向上技術の開発に取り組んでいる。

 IHIは2026年3月までにハイパースペクトル衛星を打ち上げ、安全保障や公共、商業といった顧客向けのユースケースの開発を検討していくハイパースペクトルは、計測しない波長帯が多い従来のマルチスペクトルと異なり、広範囲の波長帯で欠損なく連続的なデータが取得できる。そのため、宇宙空間から識別できる物質の種類が多くなるとして注目されている。

(左から)在日フィンランド商工会議所 専務理事 Antti Kunnas(アンティ・クンナス)氏、フィンランド大使館 武官補佐 Tuukka Mäki-Lohiluoma(トゥーッカ・マキ=ロヒルオマ)氏、ICEYE 衛星販売部門担当シニアバイスプレジデント Otso Ojanen(オツォ・オヤネン)氏、IHI 常務執行役員 航空・宇宙・防衛事業領域長 佐藤篤氏、防衛装備庁 装備政策部 国際装備課 防衛装備移転戦略官 遠藤敦志氏
(左から)在日フィンランド商工会議所 専務理事 Antti Kunnas(アンティ・クンナス)氏、フィンランド大使館 武官補佐 Tuukka Mäki-Lohiluoma(トゥーッカ・マキ=ロヒルオマ)氏、ICEYE 衛星販売部門担当シニアバイスプレジデント Otso Ojanen(オツォ・オヤネン)氏、IHI 常務執行役員 航空・宇宙・防衛事業領域長 佐藤篤氏、防衛装備庁 装備政策部 国際装備課 防衛装備移転戦略官 遠藤敦志氏

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IHIプレスリリース

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