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天地人「宇宙水道局」、累計約自治体数が30突破–衛星データで漏水リスクを把握

2025.04.11 16:00

UchuBizスタッフ

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 JAXAベンチャーの天地人(東京都中央区)が提供する衛星データを活用した水道管漏水リスク管理システム「天地人コンパス 宇宙水道局」の累計契約自治体数が30を突破した。4月10日に発表した。

 世界各国500機以上の人工衛星が観測したデータやオープンデータをもとにウェブベースの地理情報システム(GIS)「天地人コンパス」がベースとなっている宇宙水道局は、約100m2のメッシュ単位で漏水リスクを5段階で診断。管路ごとのリスクを診断する「管路単位のリスク診断」を組みあわせることで水道インフラの状態をより細かく把握して、より効率的に維持管理できるのが特徴。

 管路診断結果に基づく、漏水リスク診断結果である「健全度」と、一般住宅から重要給水施設(病院や学校、避難所など)まで、さまざまな施設や暮らしへの影響を包括的に考慮した「重要度」を組みあわせて評価することで複数の「更新優先シナリオ」を作成できる。

 シナリオは、平時の漏水リスク重視、災害時の社会的影響重視など地域課題や目的に応じて柔軟に設定できる。環境の変動を考慮したシナリオを通じて、各管路の更新優先順位を合理的、透明性をもって決定することで有用性の高い計画策定を支援するという。

 上下水道の管路は地下に埋設されているため、地上から正確に状態を把握することは困難。目に見えない場所で進行する劣化や損傷は、突然の漏水や道路陥没といった形で表面化し、生活や都市の機能に重大な影響を与える。

 日本では現在、上水道で年間約2万件以上の漏水事故が発生していると同社は説明。その主な原因は老朽化。1960年代の高度経済成長期に敷設された水道管の多くは40年以上経過した、いわゆる経年管であり、地球約4周分の約17.6万kmに達しているとされている。更新費用は1kmあたり2億円とされ、全国の自治体は危機的な局面を迎えていると同社は解説する。

 気候変動による異常気象の増加や地震による地盤変動も管路へのリスクを高めている。しかし、厳しい財政状況や技術者不足から、すべての老朽管を更新することは現実的ではない。

 そうした状況から同社は、見えざる地下のリスクを(1)どの管路が近い将来漏水する可能性が高いのか(漏水のリスクを検知する)、(2)どの管路が重要なのか(その管路の機能が停止した際の重要施設への影響度)――という2つの観点から把握することが重要としている。

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