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アストロスケール、宇宙での衛星への燃料補給技術の研究開発で国から採択
2025.01.23 08:00
アストロスケール(東京都墨田区)は1月22日、科学技術振興機構(JST)の研究開発課題に採択されたと発表した。研究開発期間の目安は5年。予算総額は最大120億円。採択されたのは「協力衛星を対象とした宇宙空間における燃料補給技術の確立」。
地球周回軌道は衛星に加えて、役割を終えた衛星などの宇宙ゴミ(スペースデブリ)が増加することで混雑化が加速しており、長期的に軌道を利用するのは困難になると考えられている。こうした問題を解決して「宇宙の持続可能性(スペースサステナビリティ)」を実現するには、削減(reduce)、再利用(reuse)、修理(repair)、燃料補給(refuel)、除去(remove)といった循環型経済を宇宙空間で実現することが重要であり、その解決策として期待されているのが「軌道上サービス」になる。
軌道上サービスに含まれる燃料補給サービスは、衛星運用者にとっては衛星の寿命を延ばすことで衛星の数や打ち上げ回数を抑えることにつながる。燃料の制約を取り払うことで衛星のミッションの範囲や柔軟性を拡大して、燃料の制約によって実行できなかった新しい衛星の使い方も可能になると考えられている。
燃料補給についてアストロスケールは、国際市場を意識した戦略が重要と説明。今回の研究開発では、同社がこれまで獲得してきた、宇宙空間での接近・近傍運用(Rendezvous and Proximity Operations:RPO)技術を土台に、低軌道での化学燃料補給を実証する。さまざまな推進剤を地上で検証する。静止軌道での燃料補給や電気推進システムでの燃料補給への拡張性も視野に入れて研究開発を進めていく。
今回アストロスケールが採択されたのは、内閣府が主導して、国立研究開発法人であるJSTが推進する「経済安全保障重要技術育成プログラム(Kプログラム)」で「衛星の寿命延長に資する燃料補給技術」の研究開発構想に含まれる。
Kプログラムは、日本が国際社会で中長期的に地位を確保するために不可欠な要素となる先端的な重要技術について、研究開発と成果の活用を推進することが目的。安全保障と経済を横断する領域でさまざまな課題が顕在化するようになっており、主要国は、国と国民の安全保障上の多様な脅威への有効対策として鍵となる技術の把握や情報収集、分析、技術流出問題への対処、AI(人工知能)や量子コンピューターなどの先端技術の研究開発や活用を進めている。
日本が技術的優位性を高め、不可欠性の確保につなげていくためには、国が重要技術の研究開発を進め、育成していく必要があるという認識から、2022年に経済安全保障法が成立して、内閣府が主導するKプログラムが創設された。
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アストロスケールプレスリリース