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高校生や大学生などが開発–8月29日に超小型衛星が国際宇宙ステーションから放出
2024.08.29 08:00
国際宇宙ステーション(ISS)の日本実験棟(JEM)「きぼう」からキューブサット7機が放出される。放出の様子は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の公式YouTubeチャンネルでライブ配信される予定。日本時間8月29日の午後6時20分~6時55分、午後8時~8時20分の2回に分けて放出される。
放出されるキューブサットは、「CosmoGirl-Sat」「SaganSat0」「SAKURA」「Wisseed Sat」とオーストラリアのカーティン大学が開発した「Binar-2」「Binar-3」「Binar-4」。大きさは10cm×10cm×10cmの1U。
CosmoGirl-Satは、宇宙業界で活躍したい女性中心の宇宙コミュニティー「コスモ女子」から発足した団体「コスモ女子アマチュア無線クラブ」が開発した。
コスモ女子アマチュア無線クラブは、宇宙開発の経験のない女性が主体となり、人工衛星の打ち上げを通して「宇宙は手の届かない遠いものではなく、誰でもチャレンジできる」ことを伝えたいという思いで活動しているという。性別や経験、専門性などは関係なく、中学生から60代まで、さまざまなバックグラウンドを持つ人で構成されているという。
放出されるCosmoGirl-Satのミッションは「専門家ではない女性の挑戦」「宇宙人材の育成」「通信環境の構築」「願い事や想いを集め、人工衛星に載せて宇宙に届ける」となっている。開発プロジェクトの様子はコスモ女子アマチュア無線クラブのnoteで読むことができる。
SaganSat0は、佐賀県内の高校生の理化教育推進を図ることが目的。佐賀県のほかに佐賀県立宇宙科学館 ゆめぎんが、佐賀県立有田工業高校、佐賀県立唐津東高校、佐賀県立武雄高校、江楠学園 北陵高校、早稲田佐賀高校、九州工業大学が開発した。ミッションは「360度カメラ2台による全天球写真の撮影」「赤外線カメラによる雲の量や分布の観測」など。
SAKURAは千葉工業大学が開発。衛星基本機能の宇宙空間での動作を確認するとともに、撮影した画像1枚を地球上で画像に復元することを「ミニマムサクセスレベル(最低成功条件)」に設定している。
自然災害が多い日本のリスクのひとつに火山噴火が挙げられることから、SAKURAでは、桜島を撮影して定期的に観測する。噴火前後の変化を比較することをミッションのひとつに考えているという。
太陽の観測に加えて、火山や洪水、台風を対象とした地球観測にも挑戦。アマチュア無線局がアマチュア無線電波上に生データをリアルタイムに配信するパケット通信プロトコルである「APRS(Automatic Position Reporting System)」で一般アマチュア無線家へのメッセージ送受信にも挑戦する。
SAKURAのミッションは「太陽黒点とフレアの観測」「黄河の洪水被害調査」「台風の規模、被害状況の調査」も予定されている。
Wisseed Sat(ウィシードサット)は、宇宙事業企画会社というWisseed-the terra(東京都目黒区)が提供する教育プログラム「ウィズシードアカデミー」の一環として開発された。
子どもの健康と成長を願って屋根に乳歯を投げ上げるという日本古来の習慣に倣い、子どもたちの乳歯を宇宙まで運ぶという。子どもたちに宇宙の魅力を感じてもらうことで、科学や数学に関心をもってもらう教育的効果が期待されるとしている。
ライブ配信されるのは1回目がCosmoGirl-SatやSaganSat0、SAKURA、Wisseed Sat、2回目がBinar-2、Binar-3、Binar-4。
きぼうにある「小型衛星放出機構(JEM Small Satellite Orbital Deployer:J-SSOD)」から放出する。J-SSODは、キューブサット規格(10cm×10cm×10cm)の衛星や50kg級の超小型衛星をきぼうのエアロックから搬出して宇宙に打ち出して軌道に乗せるための仕組みだ。
キューブサットの放出では、繰り返し利用できる「軌道上装填型衛星放出機構」(JEM Small Satellite Orbital Deployer Resuppliable:J-SSOD-R)を導入している。対象となるキューブサットは打ち上げケースに搭載され、ISS内に滞在するクルーがJ-SSODに移設する。
放出可能な最大サイズは6U、W6Uとなっている(キューブサット規格=縦10cm×横10cm、高さがそれぞれ1U:10cm、2U:20cm、3U:30cm、4U:40cm、5U:50cm、6U:60cm。W6U:縦10cm×横20cm×高さ30cm。50kg級衛星=55cm×35cm×55cm)。
J-SSODから衛星を放出したい企業などに対応する窓口はSpace BDと三井物産エアロスペースが担っている。放出枠の7割が2社に事業移管されている。研究開発や人材育成に加えて、商業利用を目的にした衛星放出も可能になっている。今回放出されるうちCosmoGirl-SatとSaganSat0、SAKURA、Binar-2、Binar-3、Binar-4がSpace BD、Wisseed Satが三井物産エアロスペースが担当している。
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JAXA有人宇宙技術部門発表