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九州工業大学とSpace BD、包括協力協定を締結–衛星部品分野への新規参入を支援

2022.08.05 17:49

飯塚直

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 九州工業大学(北九州市戸畑区)とSpace BD(東京都中央区)は8月5日、包括協力協定を締結したと発表した。産学連携による新技術開発の加速を通じて、社会と産業発展に貢献することが目的。

 九州工業大学は、世界トップレベルの衛星開発数を誇り、国内外の宇宙研究をリードしているという。また、「革新的宇宙利用実証ラボラトリー」をはじめとする研究開発環境と高い研究開発能力により、主に超小型衛星の研究開発の分野で世界からも注目されているとしている。

 昨今、欧米では新技術開発の好循環により、スピード感のある宇宙開発が進んでいると説明。業界全体で新技術を積極的に採用するなどの機運が高まり、新製品の導入や活用実績が残りやすいことに加え、地上試験のミニマル化による開発コスト削減や積極的な試験データの開示、宇宙実証プラットフォームの整備などにより、新技術開発が加速していると解説している。

 日本では、宇宙転用可能な高度技術を持つ企業が多く存在する一方、試験を重ねて開発した宇宙用製品の実用につながりづらい、開発した製品の生産や供給体制を維持できず企業が撤退するといったケースもある。

 そこで両者は、このような日本の宇宙業界の課題解決への貢献を目指し、(1)衛星部品分野への新規参入支援、(2)世界をリードする既存・新技術の製品化、(3)実践力を持った宇宙人材の教育――について協働する。

 (1)の「衛星部品分野への新規参入支援」では、宇宙産業に参入したい企業に対して、技術コンサルティングや試験設備の活用推進・共同研究を実施。Space BDのネットワークを利用して、市場のニーズを反映した製品企画を支援するほか、製品化に必要な試験基準も見直しを進め、効率的な試験プランの設計で試験コストをミニマル化すると説明している。

 (2)「世界をリードする既存・新技術の製品化」では、「衛星部品分野への新規参入支援」の研究成果を製品化し、産学で活用、応用していく。Space BDの国内外のネットワークを活用し販路開拓を支援するほか、九州工業大学が開発する衛星に新技術を積極的に導入し、実績を積み上げていくという。

 (3)「実践力を持った宇宙人材の教育」では、Space BDの教育事業と九州工業大学の教育機能を生かし、宇宙産業を支える人材を育成。社会人の“リカレント教育”や地域住民への宇宙教育の機会を創出する。宇宙分野の人材が交流できる場も企画し、マッチングの機会を設けるとしている。

 両者は今後、Space BDの国際宇宙ステーション(ISS)の日本実験棟「きぼう」を活用した宇宙実証サービスや事業開発力(ニーズ)と、九州工業大学が持つ地上試験設備や知見といった研究力(シーズ)を掛け合わせることで、宇宙産業の活性化を目指すという。

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