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ispace、小型月面探査車の環境試験が完了–月でレゴリスを採取、実機開発へ
2024.04.12 12:11
ispace(東京都中央区)は4月12日、欧州法人ispace EUROPE(ispace EU)が民間月探査プログラム「HAKUTO-R」のミッション2で活用する小型月面探査車(マイクロローバー)の「認定モデル」を使用した試験が完了したことを発表した。
認定モデルの環境試験の完了は、設計を検証して、マイクロローバーがロケットで打ち上げるときに生じる振動などの負荷に耐え、月面で活動できるかどうかを実証する、開発マイルストーンの一つになる。
2023年11月にマイクロローバーのデザインを発表してからispace EUは「エンジニアリングモデル」の開発を開始、設計の妥当性を確認してから認定モデルが試験された。試験結果を踏まえて「フライトモデル」の開発が始まる。
エンジニアリングモデルは、基本設計に基づいて制作し、機能や性能など妥当性を確認して次の詳細設計段階に移行するための設計を固めるためのデータを取得する。品質や信頼性を除いて実機とほぼ同一の仕様とされる。フライトモデルは実際に宇宙に打ち上げるもの。
マイクロローバーは今後、フライトモデルの開発と並行して、ミッション2でマイクロローバーを含めた貨物(ペイロード)を月に輸送する着陸船(ランダー)の認定モデルに搭載され、ランダーと統合された状態で環境試験を受ける。マイクロローバーのフライトモデルは開発が終わると、2024年の夏頃に日本に運ばれ、ランダーに搭載される予定となっている。
ミッション2では、マイクロローバーで月の塵や砂(レゴリス)を採取して、所有権を顧客となる米航空宇宙局(NASA)に譲渡する。NASAとの月資源商取引プログラムでNASAが主導する月探査計画「Artemis」に貢献するという。2020年12月にispace EUとNASAは契約を締結している。
HAKUTO-Rのコーポレートパートナーである、スウェーデンの土木機械メーカーEpiroc ABが開発するスコップをマイクロローバーの後方に搭載する。月面着陸後にスコップでレゴリスを採取して、マイクロローバーに搭載したカメラで採取物を撮影する計画となっている。
マイクロローバーは、ルクセンブルク宇宙庁(LSA)が管理して欧州宇宙機関(ESA)が進める「LuxIMPULSE」プログラムの一環として、LSAの共同資金で開発している。LuxIMPULSEは、宇宙資源の産業化を積極的に推進して、宇宙資源の探査と活用を目指すルクセンブルク政府の施策。
ミッション2で月までペイロードを輸送するランダーの名前は「RESILIENCE」。RESILIENCEは、高砂熱学工業が開発した、月面で水から水素と酸素を生成する「月面用水電解装置」、アニメ「機動戦士ガンダムUC」に出てくる「宇宙世紀憲章プレート」などを月に運ぶ。打ち上げは10~12月を予定している。
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ispaceプレスリリース