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宇宙港「HOSPO」を中心にした観光振興で日本旅行などがパートナーシップ
2022.07.20 13:50
アジア初の商業宇宙港「北海道スペースポート」(HOSPO)を題材とした宇宙による観光振興・宇宙のまちづくりに関するパートナーシップ協定を日本旅行や北海道大樹町、HOSPOを運営、管理するSPACE COTANが締結した。7月20日に発表した。
日本旅行は、専門部署「宇宙事業推進チーム」により、宇宙をテーマにした事業を推進。宇宙開発にまつわる観光事業のほか、星空を観光資源とした星空エンタメ事業、宇宙を通した学びで探究体験を提供する学校向けプログラム「ミライ塾」を展開している。
これらの宇宙体験プログラムは2015年以降で2万人が利用。今後は、世界的な宇宙ビジネスの進展と最先端技術の進化にあわせて、観光や教育の各分野でさまざまな企業パートナーと共創を進めていくという。
3者は大樹町での民間ロケットの打ち上げなどに関連した観光商品やイベント企画運営、2021年に開催された宇宙ビジネスカンファレンス「北海道宇宙サミット」などの取り組みで協力関係にある。
今回、3者の強みや特徴を生かし、宇宙港や地域資源を活用したさらなる価値創出や事業創出に取り組むため、パートナーシップ協定締結に至ったという。
3者が連携、協働することで、宇宙港などを活用した観光振興(スペースツーリズム)や宇宙のまちづくりに取り組み、地域活性化や宇宙版シリコンバレー実現を目指す。
具体的には、HOSPO施設やロケットの開発や打ち上げなどを軸としながら、食・農業・大自然などの地域資源を活用、組み合わせたユニークな観光コンテンツを企画開発する「観光誘客事業」を進めるという。
HOSPOを通して民間宇宙ビジネスの最前線を体感できる環境を構築するほか、牛の糞尿に由来するメタンガスから製造された液化バイオメタンをロケット燃料に活用することで、宇宙ビッグデータを活用したスマート農業など、カーボンニュートラルやサステナビリティについて学ぶ教育コンテンツを企画開発する「教育関連事業」も想定している。
キャリア教育や“STEAM(Science、Technology、Engineering、Art、Mathematics)”教育の要素を備えた最先端の学びの場として開発し、学校の修学旅行や社会科見学に向けた提供を目指す。開発したコンテンツについては、ミライ塾で提供するという。
加えて、ロケット打ち上げ見学場や宇宙ミュージアムなどの宇宙関連施設を整備するとともに地域ガイドを育成、加えて宿泊や食事所、多言語対応、モビリティなど滞在環境を整備することで、国内外からの観光客やビジネス客の受け入れができる体制を整え、HOSPOを核とした地域づくりを推進する「地方創生関連事業」も推進していく。
協定締結の第1弾の取り組みとして、総務省が地方創生として推進する地域活性化企業人制度を活用し、日本旅行の人材を大樹町へと派遣する。
教育現場で注目されるSTEAM教育を踏まえた修学旅行や社会科見学の商品、企業などの視察旅行やワーケーション商品を開発するほか、受け入れ態勢整備として地域ガイドの育成や研修、宿泊などの協力体制構築にも取り組むという。
地域資源の魅力を最大化するため、今後はロケット打ち上げ見学場、宇宙ミュージアムなどのコンテンツの企画開発・整備も計画。HOSPO整備にあわせて多言語対応の強化、国内外の旅行者受け入れに向けた環境整備も進めていくという。
航空宇宙のコンテンツと、十勝の大樹町がもともと持ちあわせている食や農業、大自然などの地域資源を組み合わせ、地域ならではのユニークな観光価値を創出。町内外の多様な事業者との連携を図り、北海道、十勝、大樹町の観光振興にも貢献するという。
大樹町とSPACE COTANは「北海道に、宇宙版シリコンバレーをつくる」というビジョン実現に向けて、2021年4月にHOSPOを本格稼働し、ロケットや宇宙旅行などを目的とした宇宙船(スペースプレーン)の発射場や実験場を整備している。
2025年までに2つの人工衛星用ロケット射場整備や滑走路を延長する計画で、2023年度に完成予定の射場「Launch Complex-1」(LC-1)は2022年秋に着工予定となっている。
HOSPOを通して世界の宇宙ビジネスを支えるインフラの役割を担い、国内や世界の宇宙ビジネスに貢献するほか、地方創生や宇宙と他産業の掛け合わせによるビジネス創出を目指している。
HOSPOの整備による道内の経済波及効果は年間267億円、約2300人の雇用創出、観光客は約17万人増加すると試算している。