日本電波工業、ガス分析システムを宇宙用に開発--JAXAと共創、デファクトを狙う

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日本電波工業、ガス分析器を宇宙用に開発–JAXAと共創、世界標準を取りに行く

2024.02.09 08:00

UchuBizスタッフ

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 日本電波工業(NDK、東京都渋谷区)と宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2023年11月から「宇宙用QCMセンサー刷新事業」の共創を開始した。JAXAの新事業創出プログラム「JAXA宇宙イノベーションパートナーシップ」(J-SPARC)の枠組みで進めている。2月8日に発表した。

 QCM(Quartz Crystal Microbalance、水晶振動子式微小天秤)センサーは、真空環境下で宇宙向け材料などから放出されるガス(アウトガス)を計測するためのセンサー。水晶振動子の電極に物質が付着すると、その質量に比例して低下する「質量付加効果」でのQCM法を原理とした計測法を活用しているという。2017年にNDKとJAXAが共同で開発、国内外で販売している。

 真空環境下で有機材料などから放出される、意図しない“アウトガス”は、凝縮、付着することでコンタミネーション(汚染)源となることから、宇宙用の材料や機器からの発生は極力少ないことが望まれている。

 地球観測衛星や天文観測衛星の望遠レンズの表面などでコンタミネーションが生じると、光学性能や画質を低下させ、寿命が短くなってしまう。材料からのアウトガスの発生をできる限り抑えられるように正確な計測結果に基づいた部材設定が重要になってくる。

 NDKとJAXAはアウトガス分析システム「Twin-QCM」を共同で開発。地上向けのTwin-QCMはNDKが販売している。

 Twin-QCMセンサーは、1枚の水晶振動子センサー上に参照用電極と計測用電極を設けたTwinセンサー方式のため、従来品の課題であったセンサー間の特性差や温度差のバラつきの問題が解消されるという。

 従来品は水晶振動子センサーを交換するたびにメーカーに送付する必要があり、ダウンタイムと高価な費用負担が発生していたとしている。Twin-QCMはユーザーが自ら水晶センサーを交換できることから短時間、安価に対応できるという。この地上向けTwin-QCMは国内外の宇宙機器メーカーなどへの販売実績があるという。

 今回の共創では、Twin-QCMの宇宙用フライトモデルを開発し、軌道上での実証を目指す。海外品が事実上の標準(デファクトスタンダード)となっている宇宙用QCMセンサー市場の刷新も目指す。将来の宇宙探査での利用を見越して、宇宙特有の用途である原子状酸素(AO)などの軌道上環境計測技術を確立するなど、従来のアウトガス計測以外の新しい用途の開拓も目指す。

宇宙用Twin-QCMシステムを試作、評価するための試作モデル(Engineering Model:EM)のセンサーモジュール(手前)とコントローラー。背景にあるのは水晶振動子の材料となる人工水晶(出典:NDK)
宇宙用Twin-QCMシステムを試作、評価するための試作モデル(Engineering Model:EM)のセンサーモジュール(手前)とコントローラー。背景にあるのは水晶振動子の材料となる人工水晶(出典:NDK)

 NDKは、フライト用Twin-QCMを開発するとともに顧客を開拓する。具体的には、ロケットでの打ち上げ環境、軌道上環境への対応設計、信頼性評価を担う。軌道上での限られた通信環境に対応するため、ストレージ機能の追加実装なども実施。並行して、宇宙用途としての新たな市場調査、顧客開拓を担う。

 JAXAは、新しい用途を開拓、NDKの開発を支援する。具体的には、コンタミネーション計測に限らない、新しい宇宙用QCMセンサーの用途を模索し、計測する技術の確立を目指する。軌道上実証のプラットフォームとして有力な国際宇宙ステーション(ISS)に搭載することを想定した安全要求への対応を支援。軌道上実証を目的に実証先プラットフォームを調査、検討する。

 2024年度に開発を完了し、2025年度の軌道上実証を目指す。その成果で地上用と宇宙用の両方で国産QCMセンサーを世界的なスタンダードに押し上げることを考えている。

 NDKは、人工水晶を育成するとともに水晶デバイスを製造、販売している。カーエレクトロニクス分野で高いシェアを持つ水晶デバイスを宇宙分野にも展開している。

フライトQCMセンサーを開発するとともに顧客を開拓する(出典:JAXA)
フライトQCMセンサーを開発するとともに顧客を開拓する(出典:JAXA)

関連リンク
JAXAプレスリリース

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