ニュース
ISC、単段式スペースプレーンの機体などの設計や製造でJAXAと共同研究
2024.01.29 07:00
宇宙を往復できる輸送システムの開発を目指す将来宇宙輸送システム(Innovative Space Carrier:ISC、東京都中央区)は1月26日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の「革新的将来宇宙輸送システム研究開発プログラム」の第3回研究提案募集(Request for Proposal:RFP)に2件を提案し、採択されたことを発表した。
水平着陸式宇宙輸送システム(スペースプレーン)の(1)「軽量な降着装備」と(2)「軽量な機体」――それぞれの設計や製造をJAXAと共同で研究する。
ISCとJAXAは、2022年9月~2023年9月に「高頻度往還飛行型宇宙輸送システムのコンセプト共創機会」で必要となる技術課題を洗い出すとともに抜本的な低コスト化や有人宇宙輸送技術の検討などを共創している。今回の共同研究は、この流れを汲んでいる。
スペースプレーンは、既存の空港が使えて、既存の飛行機と同じように運用できることから、運用やコストの面から優れたシステムだと考えられている。
水平着陸に使用する降着装備(飛行機で言えばランディングギア)は重く、一般的な航空機の場合、降着装備の重さは全体の8%程度を占めると言われている。海外の宇宙輸送機では前脚をソリにするなどの軽量化対策が取られている。
(1)「軽量な降着装備」について、ISCが検討している単段式(Single Stage To Orbit:SSTO)のスペースプレーンでも降着装備を軽量化するシステムが必要という。共同研究では、耐久性を落とさずに降着装備を軽量化するシステムコンセプトを設定、有人のスペースプレーンの成立性を高めることが目的。
(1)「軽量な降着装備」について、降着装備の重量を決定する要因は、大別して「作用荷重」「強度設計」「脚組み構造」「使用材料」の種類があると説明。これらに対し荷重低減や構造最適化設計、ソリの適用などの課題がいくつかあるが、それらの課題に対して各種簡易計算で技術成立性がわかるレベルまで検討する。同社が開発を進めている研究開発プラットフォーム「P4SD」(Platform for Space Development)で検討の速度を早めていくという。
(2)「軽量な機体」についてISCは、スペースシャトルでは耐熱タイルの重量増加や機体制御の難しさが問題と指摘。SSTOでも軽量化や熱負荷低減、飛行制御をバランス良く設計することが必要と説明する。
(2)「軽量な機体」の共同研究は、ISCが開発を進めている「トリプロペラント」方式のSSTOスペースプレーンをベースに軽量化機体のシステムコンセプトを設定し、有人スペースプレーンの成立性を高めることが目的としている。具体的な研究内容は以下の通り。
- 軽量化技術:トリプロペラント、高度補償、炭素繊維強化樹脂(Carbon Fiber Reinforced Plastics:CFRP)などによる機体軽量化、エアアディションなど
- 空力的安定と飛行制御による軽量化効果:トリプロペラントとして3タンク以上積むことによる重心特性への有利さの定量化、熱負荷の定量化と熱防護システム(Thermal Protection System:TPS)の軽量化検討など
今回の共同研究は、研究課題に対して、挑戦的な技術の適用性を深める研究である「チャレンジ型」。研究期間は3~8月の最長6カ月以内。研究費は1件あたり300万円以内。
関連リンク
ISCプレスリリース(PR TIMES)