将来宇宙輸送システム、水素とメタン、酸素を活用した燃焼試験に成功--日本初

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将来宇宙輸送システム、水素とメタン、酸素を推進剤にした燃焼試験に成功–日本初

2023.12.25 15:36

佐藤信彦

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 宇宙を往復できる輸送システムの開発を目指す将来宇宙輸送システム(Innovative Space Carrier:ISC、東京都中央区)は、水素とメタン、酸素を推進剤として使う「トリプロペラント方式」ロケットエンジンの燃焼試験を成功させた。トリプロペラント方式の燃焼試験成功は、日本ではこれが初めての事例としている。

 ISCは、完全再使用型の単段式スペースプレーン(Single Stage To Orbit:SSTO)の開発に取り組んでいる。SSTOを実現するには機体の軽量化が不可欠だ。

 そこで、密度が小さく比推力が高い水素の使用を大気圏外に集中させ、大気圏内で不足する推力をメタンでカバーする、水素とメタン、酸素の3種類の推進剤を組み合わせるトリプロペラント方式の適用を試みている。トリプロペラント方式を採用すると、液体水素タンクの大きさを小さくできるため、機体の軽量化につながるという。

 10秒間の燃焼時間のうち、前半の5秒は水素とメタン、酸素で燃焼させるトリプロペラント方式「モード1」、後半の5秒は水素と酸素で燃焼させる「モード2」とした。燃焼モードを切り替えつつ連続燃焼させることに成功し、期待する試験結果を得たという。

モード1からモード2へ切り替えて連続燃焼(出典:将来宇宙輸送システム)

 トリプロペラント方式エンジンの試験は、SPACE COTAN(北海道大樹町)管理の商業宇宙港「北海道スペースポート」(HOSPO)で実施した。

SPACE COTANが管理しているHOSPOで試験した(出典:将来宇宙輸送システム)
SPACE COTANが管理しているHOSPOで試験した(出典:将来宇宙輸送システム)

 今回の燃焼試験では、同社独自の研究開発プラットフォーム「P4SD」の有効性も検証した。

 ロケットや衛星は、ウォーターフォール型で開発されるのが一般的。だが、工程ごとの縦割りや仕様変更の柔軟性欠如などから開発期間が長期化しやすい。こうした背景からISCは、アジャイル型で開発するためにP4SD(Platform for Space Development)を活用している。

 P4SDは、開発に関わる全ての過程をデータ化し、クラウド上に集約させた研究開発プラットフォーム。研究や設計はもちろん、試験結果もデータ化し、集約。その後の分析や改善など、開発に関わる全てを一元管理している。

 P4SDはクラウドサービス「Amazon Web Services」(AWS)に構築。開発の関係者全員が、いつでも、どこでも、同じ情報を得ることが可能になり、アジャイル型で開発できるとしている。

P4SDのイメージ(出典:将来宇宙輸送システム)
P4SDのイメージ(出典:将来宇宙輸送システム)

 ISCは「誰もが宇宙にアクセスできる時代を創る」ことをビジョンに掲げ、宇宙往還を可能とする輸送システムの実現を目指すスタートアップ企業。SSTOでの高頻度宇宙輸送を2040年代に行うことを最終目標とし、今後5年程度で再使用型の小型宇宙輸送機を開発することを目指している。

関連リンク
ISCプレスリリース
SPACE COTANプレスリリース

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