ニュース
ソフトバンクなど、成層圏通信で不可欠な通信エリア固定に成功
2022.06.23 14:09
ソフトバンクは6月22日、通信エリアを固定させるための技術である、シリンダー形状の多素子フェーズドアレイアンテナ「シリンダーアンテナ」を搭載した高高度係留気球基地局について、広域で安定した通信エリアの実現に成功したと発表した。
フットプリント固定技術は、機体の旋回にあわせて電波の向きを変えることで、機体に搭載した通信機器からの電波により地上に形成される各セルの通信エリア(フットプリント)を固定させる技術。同社と子会社のHAPSモバイルが、成層圏から通信ネットワークサービスを提供する成層圏通信プラットフォーム(High Altitude Platform Station:HAPS)で安定した通信エリアを構築することを目指し、研究開発を進めている技術と説明する。
ソフトバンクグループが出資する米Altaeros Energiesと共同で開発した高高度係留気球基地局を活用。5月に北海道の大樹町多目的航空公園で行った実証実験で見通しが良い環境下で最大数十kmの距離で、広域な通信エリアが確保できることを確認した。
風速や風向に応じて係留気球基地局の姿勢や位置が変動する場合でも、携帯端末の接続先のセルが、別のセルに切り替わる“ハンドオーバー”が発生せず、受信レベルの変動も抑えられ、安定した通信が確認できたという。
同社では、災害時の通信エリアの復旧などを目的として、係留気球を活用した無線中継システムの開発・実用化を進めている。
今回、フットプリント固定技術とAltaeros Energiesの高高度係留気球「ST-Flex」を組み合わせた高高度係留気球基地局を開発。3本の係留索(ロープ)を人工知能(AI)で制御することで最大高度305mで安定した気球の係留を実現したほか、最大60kgの通信機器が搭載できるのが特徴と説明する。オートパイロットシステムを搭載し、運用人員の削減にも貢献できるという。
HAPSのような通信プラットフォームでは、無線基地局を搭載した機体が旋回しながら地上に向けて通信サービスを提供する。しかし、機体の旋回により地上に形成される通信エリアが移動するため、ハンドオーバーが起こり、受信レベルなどの通信品質が安定しないという課題がある。
同社とHAPSモバイルが研究開発を進めるフットプリント固定技術は、シリンダーアンテナを活用したデジタルビームフォーミング制御で機体の旋回にあわせて動的に電波の向きを制御し、通信エリアを固定させることで通信品質を安定させるものとなる。
両社によると、上空からの通信ネットワークの提供に必要不可欠な技術になるという。今後は、今回の実証実験を通して得たノウハウやデータを、災害時の通信エリアの復旧やHAPSの通信プラットフォーム構築に活用することを検討する。