気体や液体、固体などに続く物質の「第5の状態」、2種類の原子で生成--ISSで成功

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気体や液体、固体などに続く物質の「第5の状態」、2種類の原子で生成–ISSで成功

2023.11.20 07:30

塚本直樹

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 国際宇宙ステーション(ISS)で2種類の原子を含む“量子ガス”が生成されたことが11月15日付けの「Nature」誌に掲載された。

 ISSには微小重力下での原子の量子特性を研究するための冷蔵庫サイズの研究室「Cold Atom Lab」が設置されている。物質には気体や液体、固体、プラズマだけでなく、「ボース=アインシュタイン凝縮」(Bose–Einstein condensation:BEC)と呼ばれる“第5の状態”があることが知られている。

 Cold Atom Labでは2018年に初めてボース=アインシュタイン凝縮の状態を作り出すことに成功。今回、米航空宇宙局(NASA)のジェット推進研究所(JPL)のチームは1種類だけでなく、カリウムとルビジウムという2種類の原子でも、ボース=アインシュタイン凝縮の量子ガスを作り出すことに成功した。

 JPLの発表によれば、この種の量子ガスを使った将来の研究は、宇宙ベースの量子技術の開発に役立つ可能性があるという。研究の共同著者となるロチェスター大学のNicholas Bigelow教授は「ボース=アインシュタイン凝縮で作り出せるジャイロスコープは、ナビゲーションや時計に使うことができるかもしれない」と述べている。

 ボース=アインシュタイン凝縮は、原子が個別に振る舞うのをやめて集合体のように振る舞い始める気体の原子の雲とも言われている。相対性理論で有名なAlbert EinsteinとSatyendra Boseが1925年に予言したボース=アインシュタイン凝縮は、1995年に世界で初めて生成に成功。2001年のノーベル物理学賞は、ボース=アインシュタイン凝縮の実験成果に贈られた。ボース=アインシュタイン凝縮を予言したBoseは、宇宙空間での実験を提案。2001年のノーベル物理学賞受賞チームはISSでの実験を提案していた。

(出典:NASA/Roscosmos)
(出典:NASA/Roscosmos)

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「Nature」掲載論文
Space.com

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