ElevationSpace、2025年打ち上げ予定の衛星「あおば」に東北ゆかりの品を搭載

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ElevationSpace、2025年打ち上げ予定の衛星「あおば」に東北ゆかりの品を搭載

2023.11.14 10:00

飯塚直

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 ElevationSpace(仙台市青葉区)は11月14日、東北の経済活性化を目的とした、東北ゆかりの品を宇宙に打ち上げるプロジェクトを始動すると発表した。

 今回のプロジェクト「東北“ゆかりの品”を宇宙に飛ばそう!」は、ElevationSpaceが2021年に実施したクラウドファンディング「名産品を載せて、東北の民間企業初となる人工衛星を飛ばしたい!」の目標額達成を受けて実施するものとなる。

 ElevationSpaceによると、宇宙と関わりの深い東北から宇宙へ、東北に拠点を置く企業や団体ゆかりの品を打ち上げることが東北の経済活性化や宇宙産業をはじめとした新産業創出の機運を醸成できると考え、2021年3~4月にクラウドファンディングを実施。その結果、延べ175人の支援で目標額500万円を達成した。

 今回のプロジェクトでは、クラウドファンディングの趣旨に賛同し東北に拠点を構える企業や団体から提供された3品を2025年にElevationSpaceが打ち上げる人工衛星「あおば」に搭載。宇宙空間に到達後、地球をバックに「あおば」に搭載されるカメラで記念撮影する。

 搭載されるのは、GRA(宮城県山元町)のブランド高級イチゴ「ミガキイチゴ」、障害のある作家のアートライセンスビジネスを手掛けるヘラルボニー(岩手県盛岡市)の社名ロゴの原典、津波で稲作などが困難になった農地で綿を栽培し被災地復興を目指す東北コットンプロジェクトの綿花。ミガキイチゴと綿花は、宇宙空間で受ける熱や放射線の影響から守るため、宇宙での使用実績がある信越化学工業のシリコーンで加工し、衛星に搭載する。

 ミガキイチゴはGRAが2012年に販売開始。上質な複数品種のイチゴの統一ブランドの名前であり、コンセプトは「食べる宝石」。東京の百貨店では1粒1000円以上で販売されることもあるという。今回は、フリーズドライされたミガキイチゴを人工衛星に搭載する。

1粒1000円以上で販売されることもあるというミガキイチゴ(出典:GRA)
1粒1000円以上で販売されることもあるというミガキイチゴ(出典:GRA)

 ヘラルボニーは「異彩を、放て。」をミッションに掲げる福祉実験カンパニー。国内外の主に知的な障害のある作家と契約を結び、2000点を超える高解像度アートデータの著作権管理を軸とするライセンスビジネスをはじめ、アートライフスタイルブランド「HERALBONY」の運営など、福祉領域の拡張を見据えた多様な事業を展開している。

社名でありブランドネームであるヘラルボニーは、同社の2人の代表取締役の知的障害のある兄が記した言葉が起源(出典:ヘラルボニー)
社名でありブランドネームであるヘラルボニーは、同社の2人の代表取締役の知的障害のある兄が記した言葉が起源(出典:ヘラルボニー)

 東北コットンプロジェクトは津波で稲作が困難になった農地で綿を栽培し、紡績、商品化、販売までを一貫して行うプロジェクト。メンバー企業59社が宮城県内3カ所で綿花を栽培している。搭載される綿花は、国内最大級とされるワタ畑で摘み取ったものとしている。

国内最大級とされるワタ畑で摘み取った綿花が宇宙に行く(出典:東北コットンプロジェクト)
国内最大級とされるワタ畑で摘み取った綿花が宇宙に行く(出典:東北コットンプロジェクト)

 2025年に打ち上げを予定している「あおば」は宇宙環境利用・回収プラットフォーム「ELS-R」シリーズの初号機(技術実証機)であり、以前は「ELS-R100」と呼称されていた。2030年にも運用が終了する国際宇宙ステーション(ISS)に代わって宇宙環境を利用するためのものであり、打ち上げた無人の人工衛星内で実験後、地球に帰還させる。

 技術実証機である「あおば」は、衛星自体の開発技術に加え、宇宙に打ち上げた衛星を制御して地球に帰還させることを実現するために「軌道離脱」「大気圏再突入」「回収」といった技術の実証を目的としている。

 重量は約200kg、大きさは約1m四方。地球低軌道上で約半年間の実験後、貨物(ペイロード)を搭載した再突入カプセルが地球に帰還、海上での回収を予定する。

 「あおば」に搭載されるペイロードは積載可能上限に到達し、搭載枠の販売を終えている。需要が高いことから、2028年打ち上げ予定だった2号機は初号機より大型化し、打ち上げ時期を2026年に変更、宇宙環境での実験などに利用するペイロードを募集している。

(出典:ElevationSpace)
(出典:ElevationSpace)

 ElevationSpaceによると、東北地方は人口減少や高齢化などの社会課題を抱えており、特に首都圏への人口流出による生産年齢人口の減少には歯止めがかからない現状にある。東日本大震災から12年が経過し、産業活力は徐々に回復し向上しているものの、一部の産業では人手不足や風評被害への対応が今なお必要としている。

 今回のプロジェクトに参画するのはいずれも東北に拠点を置く企業や団体であり、宇宙、農業、アート、アパレルという異なる領域で事業を展開している4者が協力し、東北の民間企業として初の人工衛星「あおば」に東北ゆかりの品を搭載して宇宙空間に打ち上げることで、東北の経済活性化の象徴になることを目指す。

 ElevationSpaceは、東北について宇宙との関わりが深い地域と説明。青森県には衛星データを活用して生産するブランド米「青天の霹靂」、秋田県には宇宙航空研究開発機構(JAXA)の能代ロケット実験場、岩手県にはブラックホール観測に成功した国立天文台の水沢VLBI観測所(岩手県奥州市)、山形県には毎年アストロバイオロジー(宇宙生命科学)キャンプを行う慶応義塾大学の先端生命科学研究所、宮城県には JAXAの角田宇宙センター、福島県には宇宙機開発に欠かせない、さまざまな試験ができる福島ロボットテストフィールドなど、東北のすべての県で何かしら宇宙に関連する取り組みがあるという。

関連リンク
ElevationSpaceプレスリリース

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