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ソニーグループ、米に宇宙光通信会社を設立–低軌道衛星と地上を光で通信

2022.06.03 14:43

飯塚直

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 ソニーグループ(東京都港区)の米子会社Sony Corporation of America(SCA)は6月3日、宇宙光通信を事業とする新会社「Sony Space Communications Corporation」(SSC)を設立したと発表した。

 新会社(米カリフォルニア州サンマテオ)は、SCA(米ニューヨーク州ニューヨーク)の100%子会社として6月1日に設立。プレジデントには、岩本匡平氏が就く。

 現在、宇宙空間には約1万2000機の人工衛星があり、今後も増加が見込まれている。地球周回軌道における衛星での通信量も年々増加しており、利用可能な電波による通信量の限界が指摘されている。

 加えて、地球低軌道(LEO)衛星は地上との通信が必要であり、大容量で通信するためには大型の通信機器が必要であることや、地上局の上空を衛星が通過するタイミングでしか通信できないなどの制約から即時性に欠けるという課題がある。

 現在利用されている電波についても、周波数免許が必要なことや衛星の小型化に伴う通信機器の低消費電力化も課題となっている。

 これらの課題を解決するために、SSCは、LEOの超小型衛星間を光で接続する小型光通信機器の開発と関連サービスの提供を計画。超小型衛星にも搭載できる通信機器として、衛星開発関連企業などへのサービスとして提供する予定。

 光通信を利用することで、従来の電波通信では物理的に実現が困難な大容量通信を小型機器で実現できると説明。衛星と地上間のみならず、衛星間の光通信網を構築し、地上のどこからでも、どの衛星へもリアルタイムに通信できることを目指す。

 利用しやすい通信機器や衛星間通信サービスの提供により、宇宙空間で利用可能な通信量を増やし、宇宙空間を含めた地球全体をカバーするインターネット通信網の実現と、リアルタイムサービスなどのアプリケーション実装も目指すという。

 SSCプレジデントに就任した岩本氏はソニーコンピュータサイエンス研究所(ソニーCSL)に所属。ソニーCSLは、小型衛星に搭載可能な形状で長距離空間大容量データ通信を可能とするための光通信システムの研究開発を進めてきた。

 ソニーがCDプレイヤーなどを開発、生産する中で長年培ってきた光ディスク技術を応用することで、超小型で軽量かつ宇宙という厳しい環境にも耐え、量産可能な光通信機器の実現を目指していると説明する。

 ソニーCSLは、2020年に宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共同で国際宇宙ステーション(ISS)の「きぼう」日本実験棟に設置した小型光通信実験装置「SOLISS」(Small Optical Link for International Space Station)と情報通信研究機構(NICT)の宇宙光通信地上局との間で双方向光通信リンクを確立し、Ethernet経由での高精細度(HD)画像データ伝送に成功している。

 2021年には、SOLISSが宇宙からギリシャに設置されたKongsberg Satellite Services(ノルウェー)の商用光地上局へのデータ通信確立に成功。2022年には、JAXAと共同で成層圏や宇宙でのインターネットサービスの技術基盤となるエラー発生環境下での完全なデータファイル転送の実証にも成功していると解説している。

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