天地人、災害後に自治体全域の水道管の漏水リスクを評価するサービスを提供

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天地人、災害後に自治体全域の水道管の漏水リスクを評価するサービスを提供

2023.09.20 14:44

飯塚直

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 JAXAベンチャーである天地人(東京都中央区)は9月20日、災害後に自治体の緊急対応を支援するため、要請に応じて自治体全域の水道管の漏水リスクを評価する「災害時支援サービス」を開始したと発表した。

 同サービスは、地球観測衛星から取得した、日本全国の過去から現在のデータが蓄積されている、ウェブベースの地理情報システム(GIS)である「天地人コンパス」を基盤にした水道管の漏水リスク管理システム「宇宙水道局」を活用する。

 自治体が所有する管路情報などを組み合わせることで、災害発生による土地の変化の有無をピンポイントで正確に評価できるという。

 同社が開発した漏水リスク評価システムである宇宙水道局は、「有収率」の向上を目標にしたシステム。複数の人工衛星が観測した宇宙ビッグデータやオープンデータから約100m2の範囲内で漏水リスクの可能性区域を5段階で確認、管理できるクラウド型のシステムとなる。

 有収率は、給水する水量と料金として収入があった水量の比率。有収率が高いほど、無駄なく水道水を供給していることになる。

 宇宙水道局では、複数の衛星から得られる、漏水に影響を及ぼす地表面温度や光学画像、気象データ、植生変化、地盤変動などの環境要因のデータ群を活用。水道事業体が保有する水道管路の材質や使用年数、漏水履歴などのデータを組み合わせ、高精度に漏水可能性区域を判定するという。漏水リスク評価によって選定された高リスク区域について、高い発見率で特定できるという。

 従来の衛星データを利用した漏水検知技術では対応できなかった、水道管の亀裂による小さな漏水やコンクリートの路面下、山間部、湧水周辺など、複合的な環境での漏水調査にも対応する。

 天地人によると、自治体から要請があった場合、全域を迅速に診断。高リスクなポイントを可視化することで、優先対処・重点対処をすべき地域を抽出し、復旧に不可欠となる「全域のスクリーニング調査」の備えを強化するサービスと説明している。

宇宙水道局の画面(出典:天地人)
宇宙水道局の画面(出典:天地人)

 災害時支援サービスの提供開始にあたり、平時での防災に関する情報交換などの連携も視野に入れた有償モニターを募集。先着10自治体に特別価格で提供するという。有償モニターは東海、近畿、中国、四国、九州・沖縄の西日本地域に限定している。

 有償モニターの応募は、(1)管路情報を「shp」形式のデータ、あるいは「shp」形式に変換可能なCADデータなどを提供できる、(2)3年分の漏水修繕履歴を提供できる――が条件。募集期間は9月20日~10月20日。

(出典:天地人)
(出典:天地人)

 近年、管路の老朽化による漏水事故リスクが増加。気象変動や異常気象が増える中で、自然災害リスクも高まっているという。高齢化から人的対処の限界や担い手不足も深刻化。突発的な事態が発生すれば、平時の事故対処は困難になり、準備不足から二次、三次の災害へのエスカレートが懸念されているとしている。

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天地人プレスリリース

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