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天地人、水道管漏水リスク管理システムを提供–衛星データを活用、福島市が採用

2023.04.06 17:12

飯塚直

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 JAXAベンチャーである天地人(東京都港区)は4月6日、自治体や水道事業者向けに、衛星データを活用した水道管の漏水リスク管理システム「天地人コンパス 宇宙水道局」の提供を開始したと発表した。福島県福島市から今回のシステムの業務委託を受けていることも発表した。

 同システムは、世界各国500機以上という地球観測衛星が観測したデータ(宇宙ビッグデータ)と、水道事業者が保有する水道管路情報や漏水履歴、オープンデータなどの情報を組み合わせて、機械学習で解析することで、約100m2の地区ごとに現在や未来の漏水リスクを評価し、確認、管理できるという。

 給水区域全域の情報の確認、実地検証結果や市民からの通報内容を保存、印刷できるほか、水道管管路情報を取り込むとともに地図に表示、印刷できるなど、基本的な地理情報システム(GIS)機能も備えている。

 漏水地点を入力することで全国の漏水データが集まり、解析精度が向上。同システムを利用して漏水地点を調査、管理すれば、より精度の高いシステムに成長できるという。

 同社によると、2022年度に行った内閣府との実証実験や他自治体へのヒアリングでは、同システムの期待できる効果は点検費用が最大65%削減、調査期間が最大85%削減となっていたという。

宇宙水道局のサンプル。色のついている場所は水道管の漏水リスクの恐れのある場所を現している。現段階では漏水リスクの高低差を5段階に分けており、赤色は漏水リスクの最も高い場所を示している(出典:天地人)
宇宙水道局のサンプル。色のついている場所は水道管の漏水リスクの恐れのある場所を現している。現段階では漏水リスクの高低差を5段階に分けており、赤色は漏水リスクの最も高い場所を示している(出典:天地人)

 国内には、全体の17.6%にあたる約13万kmの管路が法定耐久年数を超えており、効率的に管路の点検、維持、修繕することが求められているという。

 だが、現状の手法では経年管を点検、維持、修繕するには、多額の費用を要するうえに広域かつ短期間で行うことは困難とされている。人口減少から税収や職員が減ることで、水道管の水道管路の漏水調査や更新時期が遅れ、全国的に大規模な漏水事故が急増していると説明する。

 同システムは、内閣府 宇宙開発戦略推進事務局の「課題解決に向けた先進的な衛星リモートセンシングデータ利用モデル実証プロジェクト」に採択されている

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