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DigitalBlast、月面での生態循環維持システム構築に向けたプロジェクトを始動

2022.05.17 14:38

飯塚直

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 宇宙産業の活性化や宇宙業界の新事業創出をサポートするDigitalBlast(東京都千代田区)は5月17日、月面での植物栽培を軸とした生態循環維持システム構築に向けたプロジェクト「NOAH」を本格始動すると発表した。

 近年、米航空宇宙局(NASA)によるアルテミス計画をはじめとした有人宇宙探査が盛り上がりを見せており、宇宙環境での食の確保や植物栽培に対する課題意識が高まっている。

 国際宇宙ステーション(ISS)などの微小重力環境が植物の育成に大きな影響を及ぼすことが明らかになっている一方で、月や火星といった低重力環境の植物育成への影響は現在十分に把握できていないという。そこで同社は、月面での植物栽培を軸とした生態循環維持システム構築プロジェクトとしてNOAHを開始する。

 同プロジェクトは、人類の月面進出を見据え、月面で人類が自給自足できる環境を作ることをゴールとしている。ステップを重ね、低重力環境下での長期間植物栽培への影響を検証していく。開発する装置は、民間企業や研究機関向けに、実験環境として提供する。

 同プロジェクトの第一歩として位置付けられている重力発生装置「AMAZ(アマツ)」のプロトタイプはすでに完成していると説明。2024年のISSでの実験開始を目標に地上実験を進めていくという(AMAZは日本神話の「天地開闢(かいびゃく)」を由来とし、月面での植物栽培の実現に向けた始まりを意味している)。

 重力発生装置のAMAZは、宇宙環境と月面重力における植物生理の研究を主目的として開発。装置の一部を回転させることで生じる遠心力を用いて、地球の6分の1という月面と同じ重力を再現している。

AMAZ(出典:DigitalBlast)
AMAZ(出典:DigitalBlast)

 発生させる重力は、月面と同じ重力のほか、回転速度を変更することでさまざまな重力環境を再現でき、同時比較することが可能。多様な重力下での栽培を通して、植物の重力応答に関する基礎データが取得できるという。栽培対象は、コケ類などを想定している。

 同社は、さまざまな実験環境の開発を計画しており、NOAHの第2弾「TAMAKI」では、給水機能を備えた植物栽培装置の開発を予定。月面での実装を目指し、段階的に生態循環維持システムの構築に必要な研究開発を進め、人類が月や火星をはじめとした宇宙に居住できる未来を目指していくとしている。

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