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三井物産エアロスペース、X線観測衛星「NinjaSat」を説明–理研が発注
2023.08.15 08:00
三井物産エアロスペースは、理化学研究所から請け負い、リトアニアのKongsberg NanoAvionicsがパートナーとして開発したX線観測衛星「NinjaSat」の概要を明らかにした。米ユタ州でのイベント「Small Satellite Conference 2023」会期中の米国時間8月7日に発表した。
NinjaSatは、6Uサイズのキューブサットであり、持続的に明るいX線天体を柔軟に観測可能と説明。国際宇宙ステーション(ISS)の船外に設置されている「全天X線監視装置(Monitor of All-sky X-ray Image:MAXI)」が発見する明るい突発天体をフォローアップして観測できるという。
NinjaSatの観測対象の一例としては、高速で自転する中性子星をもつX線連星「さそり座 X-1」の中性子星の自転周期をX線観測から求めることで、同時期に観測している重力波天文台が、定常重力波を検出するための基礎情報の獲得を狙う。
同衛星のメインペイロードとして、1UサイズのガスX線検出器(Gas Multiplier Counter:GMC)を2台搭載しており、記録されたペイロードデータはSバンド(周波数帯は3GHz帯、波長75~150mm)で地上にダウンロードされる。衛星のバックグラウンド粒子環境を継続的に監視するための放射線帯モニター(Radiation Belt Mointor:RBM)も2台搭載されている。
三井物産エアロスペースは、大きさが1U、重さが数十キログラム級程度の小型衛星を開発から製造、試験、打ち上げ、運用までを一括して利用できる「衛星ワンストップサービス」を提供。三井物産エアロスペースのネットワークから最適な衛星開発ベンダーをパートナーとして選定し、顧客ニーズに応じた衛星をワンストップで提供している。今回のNinjaSatは、Kongsberg NanoAvionicsの衛星バスを利用した同社初のワンストップサービス案件になる。
理化学研究所のNinjaSatチームは、地上の可視光望遠鏡や電波望遠鏡と連携。宇宙の強重力天体への物質降着の過程を研究するため、突発的に明るくなるブラックホールや中性子星をX線で観測することを目指している。地球低軌道(LEO)に打ち上げられるNinjaSatを利用し、2年間ブラックホールや中性子星などX線で明るい天体から放出されるX線光子を観測する。
Kongsberg NanoAvionicsでは、実証済みの多目的6Uキューブサットサイズの衛星バス「M6Pナノサテライトバス」に、理化学研究所が開発した科学ペイロードを搭載したNinjaSatの統合試験や各種試験を実施しているという。NinjaSatは、2023年中にSpace Exploration Technologies(SpaceX)のロケット「Falcon 9」で打ち上げる予定となっている。
関連リンク
Kongsberg NanoAvionics原文プレスリリース
三井物産エアロスペース抄訳プレスリリース
NinjaSat公式X(旧Twitter)アカウント