ニュース

アクセルスペース、小型衛星の開発から運用までをパッケージ化したサービス発表

2022.04.28 08:00

阿久津良和

facebook X(旧Twitter) line
1 2

 各種データはパブリッククラウドのストレージへ提供し、ユーザーは専門的な知識や見識がなくとも衛星を運用できるという。特徴的なのは、ビジネス設計から衛星の運用までを担う「AxelLiner Terminal」の存在だ。同社 取締役 最高技術責任者(CTO)の宮下直己氏はAxelLiner Terminalについて「衛星の軌道計算や取得するデータのスケジューリングを提供する」ツールであると説明した。

自動運用システムの概要(出典:Axelspace)
自動運用システムの概要(出典:Axelspace)

 衛星製造システムは、文字通り衛星開発連合としてアクセルスペースが主体となり、調達系はミスミグループ、製造系は由紀ホールディングス、輸送系はキャリムエンジニアリング(東京都江東区)、現時点で未定だが、データ連携基盤系企業も加わる、宇宙機製造アライアンスが担う。

 中村氏は「スピード感を持って世界と戦うための量産基盤を作るパートナーシップ」であると宇宙機製造アライアンスの概要を説明すると同時に「気を付けているのはピラミッド型にしない」ことだと主張した。

 製造業で多く見られる一次下請け、二次下請け構造ではなく、ITの世界では一般的になった参画企業同士が助け合い、利益を得るエコシステムを目指す仕組みと説明する。

 また、宮下氏は「製造メーカーが部品を検品し、納品先が再び検品する二重工程の排除」という利点を備えると説明。AxelLinerでは「迅速性を重視。顧客から受注して衛星軌道上でのビジネスサービスインまで最短1年未満を目指す」(宮下氏)

衛星製造システムの概要(出典:Axelspace)
衛星製造システムの概要(出典:Axelspace)

 宇宙機製造アライアンスに参画する2社は以下のようにコメントしている。

 由紀ホールディングス 代表取締役社長 大坪正人氏「今回の取り組みは日本の製造業全体に影響をおよぼす。製造部品の標準化は私個人、長年の課題だった。(取り組みを通じて)標準化に向けて努力する」

 ミスミグループ 常務執行役員兼ID企業体社長 吉田光伸氏「アクセルスペースのミッションである『宇宙を普通の場所にしたい』という思いに共感した。われわれの価値は宇宙機製造に必要なリードタイムを改革する時間の提供。他の企業とともに取り組みたい」

 AxelLinerでは、衛星の開発や運用以外でもさまざまなサービスがパッケージされる。

 衛星の打ち上げでは政府の許認可が必要だが、アクセルスペースがユーザー企業に代わって許認可を手続き。衛星の運用では電波の周波数を確保することも必要だが、同社が利用している周波数を利用したり、ユーザー企業の周波数確保を同社が支援したりする。

 衛星を海外で打ち上げる場合は衛星本体や関連する地上品の輸出許可が必要だが、同社がすべての手続きを担当。衛星の軌道やスケジュールにあわせて最適なロケットの打ち上げも同社が調整する。打ち上げ前から運用中の保険の手配も調整できるという。

 アクセルスペースは2023年後半にAxelLinerを実証する衛星の打ち上げを予定しており、同社の実証機器や顧客の実証時期に向けて交渉を進めている。実証完了後はAxelLinerの概念に沿った衛星に順次置き換え、衛星の基本機能に必要な衛星バスの高機能化と、2024年以降の打ち上げを目指す案件に対応していく。

AxelLinerの小型衛星バスシステムは130kg程度の「Bus-N」と、200kg程度の「Bus-H」を選択できる(出典:Axelspace)
AxelLinerの小型衛星バスシステムは130kg程度の「Bus-N」と、200kg程度の「Bus-H」を選択できる(出典:Axelspace)

1 2

Related Articles