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ElevationSpaceなど開発の「ハイブリッドスラスタ」、NEDOの支援事業に採択

2022.04.22 14:21

飯塚直

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 ElevationSpace(仙台市青葉区)は4月21日、東北大学と共同で開発している“ハイブリッドスラスタ”が新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「官民による若手研究者発掘支援事業」(若サポ)に採択されたと発表した。

 ElevationSpaceによると、従来の高推力の推進装置(スラスタ)は、固体や液体推進剤を用いた大型スラスタであり、安全性を維持したまま経済的に小型化するには限界があるという。そのため、大型衛星で一般的に使われるスラスタは、大きさの制約から小型衛星には搭載されていない。一方、小型衛星に搭載可能な電気スラスタは、小型ではあるものの高推力化させることには限界があると説明する。

 同社と東北大学 学際科学フロンティア研究所(齋藤勇士助教)と共同で開発するハイブリッドスラスタは、液体や気体の酸化剤と固体の燃料を用いることを特徴とする推進装置。大型衛星用のスラスタと比べると性能は劣るものの、小型衛星に搭載可能なスラスタとしては、高い安全性と高い推力を両立できるという。

 具体的には、一般的に小型衛星に用いられるスラスタの推力は大きくても数ニュートン級であるのに対し、共同開発のハイブリッドスラスタの推力は、数百ニュートン級という。

ハイブリッドスラスタの位置付け(出典:ElevationSpace)
ハイブリッドスラスタの位置付け(出典:ElevationSpace)

 同社は、ハイブリッドスラスタの軌道上実証を2023年に実施する計画で、若サポの支援で世界最高性能の小型推進装置の開発を加速させるとしている。

 すでにスラスタの基礎燃焼特性取得のための小型燃焼試験を終え、現在はスラスタの技術実証機搭載に向けた詳細設計の段階。今後は、より実機環境での燃焼試験を進めていく予定。

 ElevationSpaceは、東北大学吉田・桒原研究室でこれまで開発してきた10機以上の小型人工衛星の技術をもとに、2021年2月に設立された東北大学発宇宙スタートアップ。小型人工衛星内での宇宙実験や製造を可能とする小型宇宙利用・回収プラットフォーム「ELS-R」の提供を目指している。

 若サポは、大学などに所属する若手研究者が、企業との共同研究などの合意書を締結し、企業から共同研究などの費用が支払われることを条件として、実用化に向けた目的志向型の創造的な基礎または、応用研究を実施するものについて助成する事業。

若サポの概要(出典:NEDO)
若サポの概要(出典:NEDO)

 若手研究者と企業との共同研究など支援することで、次世代のイノベーションを担う人材を育成し、日本の新産業の創出に貢献することをが目的となる。助成金は、事業期間5年間で最大1.5億円(年間3000万円)まで。助成金の交付先は、若手研究者の所属する大学などになる。

 東北大学が助成を受けることでELS-Rプロジェクトでの獲得資金は、同社がこれまでに獲得した資金とあわせて、最大5億円に到達する見込みとなる。

若サポでの共同研究フェーズ(出典:NEDO)
若サポでの共同研究フェーズ(出典:NEDO)

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