新国産ロケット「H3」試験2号機の相乗り衛星が決定--「ALOS-4」の代わりにダミー搭載

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新国産ロケット「H3」試験2号機の相乗り衛星が決定–「ALOS-4」の代わりにダミー搭載

2023.06.28 15:38

佐藤信彦

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 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、2023年度中の打ち上げを目指している新型基幹ロケット「H3」の「試験2号機(Test Flight No.2:TF2)」へ相乗りさせる超小型衛星として、2機を選定した。

 JAXAは、「H-IIA」ロケットで実施してきた「超小型衛星相乗り事業」をH3でも継続し、大学や企業などへ機会を提供する。そこで、H3TF2へ相乗りさせる超小型衛星についての情報提供要請(RFI)を行った。

 このRFIに対して、50kg級衛星1機と、3U(30×10×10cm)サイズのキューブサット衛星3機の情報提供があり、技術面とスケジュール面の観点から以下の2機を選定した。

  1. CE-SAT-IE:キヤノン電子の50㎏級衛星。分解能0.80mの可視光センサーを搭載する。同社の衛星「CE-SAT」シリーズはキヤノン製デジタルカメラ「EOS」「PowerShot」が搭載されている
  2. TIRSAT:3Uサイズ衛星で、8~14μmと10.5~12μmという2つの波長を選択可能な非冷却小型熱赤外センサーを搭載する。衛星バス開発と衛星運用をセーレン、センサー開発をビジョンセンシング、地上局運用をアークエッジ・スペースが担当し、一般財団法人の宇宙システム開発利用推進機構(J-spacesystems)がとりまとめる
両衛星の搭載位置(出典:JAXA)
両衛星の搭載位置(出典:JAXA)

 超小型衛星相乗りでのキューブサット用の放出機構は1Uサイズにしか対応していないため、最近の主流である3Uサイズの軽量な放出機構を軌道上で実証するとともに、必要な技術知見を獲得することを狙っている。

 今回のTF2では、JAXAによる新事業創出プログラム「JAXA宇宙イノベーションパートナーシップ(JAXA Space Innovation through PARtnership and Co-creation:J-SPARC)」の成果である非火工品での衛星分離機構を軌道上で実施して、今後の相乗り事業での活用を狙う。

 CE-SAT-IEについては、その仕様に加えて、CE-SATシリーズのこれまでの軌道上実績から、小型光学衛星による災害時緊急観測、地理空間情報整備、3D都市データ作成研究など先進光学衛星「だいち3号」(ALOS-3)が果たすはずだった役割を限定的にでもリカバリーすることを考えている。加えて、次期光学ミッションの選択肢を広げるため、CE-SAT-IEで得られる撮像データを活用する。

 TIRSATについては、経済産業省の委託事業「サプライチェーンの迅速・柔軟な組換えに資する衛星を活用した状況把握システムの開発・実証」で開発が終了している衛星であり、ウクライナ情勢などから打ち上げ機会を確保できずに、事業が中断していた。今回のTF2で打ち上げることで事業完成に貢献することを考えている。

 両衛星の投入軌道は、高度約670kmの太陽同期準回帰軌道。これは、2023年3月に打ち上げ失敗したH3の「試験1号機(TF1)」で軌道投入する予定だったALOS-3と同様の軌道だという。TF2には先進レーダー衛星「だいち4号」(ALOS-4)の代わりにダミーペイロードを搭載する。

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