超小型ロボットで月を探査する「Project YAOKI」にパンチ工業が参加

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超小型ロボットで月を探査する「Project YAOKI」にパンチ工業が参加

2023.05.17 08:00

飯塚直

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 超小型で超軽量という月面探査ロボット「YAOKI」を開発し、月開発に向けた事業「Project YAOKI」を進めているダイモン(東京都大田区)とパンチ工業(東京都品川区)は技術パートナー契約を5月8日に締結した。5月16日に発表した。パンチ工業はProject YAOKIに参画する。

 パンチ工業によると、今後予定される月面基地の建設で使用するロボットは探査車から建機(電動式・超軽量式)となり、各種ロボットの移動距離も長距離かつ、高速性が求められる時代になると見込んでいるという。

ダイモン 代表取締役 最高経営責任者(CEO) 中島紳一郎氏とパンチ工業 代表取締役 社長執行役員 CEO 森久保哲司氏(出典:パンチ工業)
ダイモン 代表取締役 最高経営責任者(CEO) 中島紳一郎氏とパンチ工業 代表取締役 社長執行役員 CEO 森久保哲司氏(出典:パンチ工業)

 パンチ工業は、先行して宇宙ビジネスに参入し、複合材新素材の活用などで得られた技術を地球上での既存事業や新規事業に活用することを目的にダイモンとの技術パートナー契約を締結した。宇宙ビジネス以外の市場でも活用することで、より社会から必要とされる企業となることを目指していくという。

 パンチ工業グループは、2022年4月~2025年3月の中期経営計画「バリュークリエーション2024」でモノづくりにおける自動化、省人化需要を新たな成長エンジンとして定めている。

パンチ工業の中期経営計画「バリュークリエーション2024」(出典:パンチ工業)
パンチ工業の中期経営計画「バリュークリエーション2024」(出典:パンチ工業)

 重点経営課題として「新規・既存事業の拡大」「生産体制の強化」「研究開発(R&D)強化」の3つを挙げており、それらの課題への取り組みを支える経営基盤の強化策として「DX推進」「財務戦略」「サステナビリティ」に取り組んでいる。

 今回のダイモンとの業務提携で「新規・既存事業の拡大」の施策のひとつである「受注サービスの強化」、「R&D強化」の取り組みの一環である「P-Bas(Punch Bonding and sintering)」と「航空宇宙関連の強化」の推進を図る予定。

P-Basはパンチ工業独自の技術(出典:パンチ工業)
P-Basはパンチ工業独自の技術(出典:パンチ工業)

 月面探査車計画のProject YAOKIは、月面探査車のYAOKIを月面に輸送し、月面で走行させ、月表面の接写画像データを取得。資源確保や居住区など人類の活動拠点構築に必要とされる月面を探査するプロジェクト。

YAOKI(出典:ダイモン)
YAOKI(出典:ダイモン)

 米航空宇宙局(NASA)の商業月輸送サービス(Commercial Lunar Payload Services:CLPS)に採択された米Intuitive Machinesとダイモンは1月に契約。Intuitive Machinesが2023年に予定しているミッション「IM-2」で打ち上げる月着陸船「Nova-C」にYAOKIが1台搭載されるという。

 パンチ工業は、2016年から現物を3Dスキャナーで3Dデータ化し、図面がない部品などを復元する「リバースエンジニアリング」事業に取り組んでいる。

 Project YAOKIで、3Dスキャナーの測定技術を活用したサービス「3D計測パートナーズ」を活用し、設計と実機の精度保証やケースと本体のクリアランス(隙間)仮説検証などを実施する。

 P-Basの焼結技術でYAOKIの車輪向けに軽量で耐摩耗性や耐熱性に優れた新素材の開発を目指す。YAOKIの車輪と本体をつなぐ、モーター軸固定用部品の加工(高硬度アルミ材)では、顧客の図面の通りに加工するオーダーメードの特注品加工技術を応用することで難易度の高い航空宇宙産業の部品加工も手掛けていくという。

YAOKIの部品(出典:ダイモン)
YAOKIの部品(出典:ダイモン)

 ダイモンは今後も、発展が見込まれる宇宙分野への展開を積極的に進め、事業の成長を図っていくとしている。

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