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宇宙サウナに宇宙観覧車–「ChatGPT」「Bing AI Chat」で新ビジネスを創出【UchuBiz主催ワークショップ】
2023.05.19 09:00
AIが説得力を補強–「宇宙サウナ」などの斬新なアイデアが誕生
イベントの後半は、今回のイベントのメインとなるワークショップとなった。「新しい宇宙の使い方や関わり方の創出」をテーマにしたアイデアソンだ。参加者4~5人ずつが12チームに分かれ、それぞれで新たな宇宙関連ビジネスを自由に発想し発表する。ここでの肝は、Bing AI ChatやChatGPTをどのように活用するかだ。
アイデアをブラッシュアップしていくにあたっては、ビジネスモデルを検討する際に用いる「リーンキャンバス」を利用し、そこにビジネスの課題や顧客、価値、優位性などの要素を埋めていく手法が取られた。それら要素やプレゼン資料の作成にAIチャットをうまく使えれば、説得力の高いアイデアの提案につながるかもしれない。前段のMicrosoftによるプロンプト例の応用が鍵になってくる。
アイデア検討と資料作成に充てられた時間は、およそ1時間半と短い。しかし、各チームともアイデアにおける課題抽出だけでなく、アイデアを補強する客観的なデータの提示や、SNSマーケティング用の文言生成などにもAIチャットを駆使し、さらにはプレゼン用の挿絵作成に画像生成AIを使うチームもあって、まさにAI時代らしいワークショップを体現していた。
ゲスト賞は「雪害撲滅ステッキ」「花粉マップサービス」「宇宙宝くじ」「宇宙観覧車」
そんな12チーム、12個のアイデアのなかから、ゲストのJAXA藤平氏と宇宙エバンジェリストの青木氏、そしてタカラトミーアーツ宮下氏の3人が選ぶゲスト賞に輝いたのが、「雪害撲滅ステッキ」「花粉マップサービス」「宇宙宝くじ」「宇宙観覧車」の4つ。
「雪害撲滅ステッキ」は、豪雪地帯において特に高齢者が雪かきできずに困っている問題を解決するためのアイデア。高齢者の歩行時の補助にもなるステッキに、衛星データを元にした雪崩発生の通知機能をもたせ、そのステッキを通じて若い世代のスキーヤーとマッチングできるようにする。スキーヤーは高齢者宅付近の雪かきを手助けすることで、スキー場で滑るときにかかる費用の割引を受けられる、というものだ。「すでに目の前に困っている人がいる喫緊の課題」に向けた提案だとして藤平氏は評価していた。
「花粉マップサービス」は、スギ花粉など微粒子の飛散量を衛星データを元に分析し、細かな住所ごとに可視化するもの。不動産会社や自治体などに向けてサービス提供し、土地や建物に付加価値をもたせることを目指す。花粉の飛散による花粉症は今後ますます深刻化していく可能性があるため、その影響を受けにくいことが明らかな土地であれば、健康的に暮らしたい人にとっては大きなメリットがあるだろう。藤平氏は、自身も花粉症に悩まされているとしつつ、花粉の飛散量を「土地や家の評価につなげるのはビジネスに結び付きやすいのではないか」とコメントした。
「宇宙宝くじ」のアイデアは、現在の公営宝くじのような形で一般の消費者向けに販売し、1等賞品として宇宙旅行を用意するとともに、宝くじの売り上げを宇宙開発の原資にするというもの。購入者にとって夢のある宝くじになるうえ、購入者が多いほど日本の宇宙開発も進むことになる、一挙両得のアイデアだ。青木氏はクラウドファンディングを利用することも考えられると述べ、宮下氏は「宇宙を目指している人を応援したい」という思いから選定したと語った。
「宇宙観覧車」は、宇宙レベルで物事を考えることで世界の争いをなくしたいという壮大なプランにおける1ステップ目、「遠距離恋愛で体験を共有できないことによる関係の破綻」を防ぐアイデアだという。宇宙(地球周回軌道上)にカップル2人だけの空間(宇宙船など)を用意し、観覧車のように地球を周回するサービスを提供するものだ。ただし、限られた酸素量で1週間生き延びなければならないという状況下に置き、非日常的なスリルを共有することで、2人の絆を深めるられるようになる、としている。これまでに宇宙関連のアイデアを数多く見聞きしてきた青木氏だが、これについては「聞いたことがない」と舌を巻いていた。
最優秀賞は「宇宙サウナ」
最後、参加者全員の投票によって選ばれた優秀賞には「宇宙サウナ」が輝いた。宇宙ステーションでは水が貴重なため使用量が著しく制限されているが、今後一般の宇宙旅行者が増えてくれば、入浴できないという問題はより大きくなると考えられる。そこで、ごく少量の水で地上における入浴に近い体験が得られる「宇宙サウナ」を提案。小型ポッド内に蒸気を満たすことで、わずか600ミリリットルの水量でサウナを実現でき、さらにはスーツ内に水を満たすことでよりリッチな入浴体験が可能な「水風呂スーツ」も考えられるとした。
他には、無重力空間で行うプロスポーツリーグやアスリート支援、月面での地産地消を目指す取り組み、宇宙で使えるコスメ商品、宇宙空間で得られた電磁波などの成分化データを活用する商品開発といったアイデアが発表された。どのチームも1時間半という短い時間ながらも資料をしっかり用意し、論理的に説明していたのが印象的。課題設定やソリューションの提案などにAIチャットを上手に活用し、手際よく情報整理できたことが大きかったのではないだろうか。