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楽天モバイル、「衛星とスマホの直接通信」に成功–ASTと通話実証、日本全土エリア化へ一歩

2023.04.26 11:19

小口貴宏(編集部)

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 楽天モバイルは4月21日、米AST SpaceMobile(AST)の試験衛星「BlueWalker 3」を用い、衛星とスマートフォンの直接通信による音声通話に成功したと発表した。

地球低軌道に浮かぶBlueWalker 3。スマートフォンと直接4G / 5Gによる双方向通信をするために巨大なフェーズドアンテナを搭載している
▲地球低軌道に浮かぶBlueWalker 3。スマートフォンと直接4G / 5Gで双方向通信するために巨大なフェーズドアンテナを搭載している

 実験は日本時間4月21日10時31分に実施した。米AT&Tの周波数を使用し、ASTでCharman兼CEOを務めるAbel Avellan氏(米テキサス州)と、楽天モバイルのエンジニア(東京)間で音声通話に成功した。なお、スマートフォンは改造せず通常仕様の端末を用いた。

BlueWalker 3との初の音声通話をサポートしたASTの技術者チーム
▲BlueWalker 3との初の音声通話をサポートしたASTの技術者チーム

 また、ASTは、音声通話の試験に加えて、様々な種類のスマートフォンやデバイスでの初期互換性試験も実施した。スマートフォンに関しては、宇宙からあらゆる電話端末やデバイスにブロードバンド接続を提供する際に重要な「SIM」、およびネットワーク情報を「BlueWalker 3」と直接交換することに成功したという。

テキサス州にて音声通話試験を行うASTのAbel Avellan(左)と技術者
▲テキサス州にて音声通話試験を行うASTのAbel Avellan(左)と技術者

 また、スマートフォンのアップリンクとダウンリンクの信号強度に関する追加試験と測定により、モバイル・ブロードバンドの通信速度および4G LTE、5G波形に対応できることも確認したとしている。

楽天の三木谷氏「大変喜ばしく思う」

 楽天モバイルは、ASTの衛星を用い、山岳部や離島などを含めた日本全土を宇宙から楽天モバイルエリア化する「スペースモバイル計画」を推進している。

 今回の成功について、楽天グループで代表取締役会長兼社長を務める三木谷浩史氏は「大変喜ばしく思う。楽天グループとしても私たちの目標である『携帯市場の民主化』に向けて大きく前進できると考えている」とコメントした。

試験にはASTに出資するVodafone、AT&Tのエンジニアチームも参加した
▲試験にはASTに出資するVodafone、AT&Tのエンジニアチームも参加した

 主に楽天グループが創業資金を拠出したASTは、2022年9月に試験衛星 BlueWalker3の打ち上げに成功。今後は、2024年Q1に予定されている5機の衛星「Block1 BlueBird」の打ち上げと、BlueWalker 3の追加機能の試験を継続的に実施するという。

 日本国内では、2022年11月に実験試験局免許の予備免許を取得しており、今後は本免許が付与され次第、国内での通信試験と事前検証を開始するとしている。

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