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実際のデブリに接近、調査する世界初の試み–アストロスケール、紹介動画を公開

2023.03.30 17:40

飯塚直

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 人工衛星を製造、開発するアストロスケール(東京都墨田区)は3月30日、2023年度にミッション開始を予定している商業デブリ除去実証衛星「ADRAS-J」(Active Debris Removal by Astroscale-Japan)の紹介動画を公開したと発表した。

 同社は、宇宙ゴミ(スペースデブリ)除去を含む軌道上サービスに取り組むアストロスケールホールディングス(東京都墨田区)の子会社。大型デブリ除去などの技術実証を目指す宇宙航空研究開発機構(JAXA)の「商業デブリ除去実証(Commercial Removal of Debris Demonstration:CRD2)」フェーズIの契約相手方として選定され、ADRAS-Jを開発している。

ADRAS-J紹介動画(出典:アストロスケール/YouTube)

 ADRAS-Jは、米Rocket Labのロケット「Electron」での打ち上げを予定しており、軌道投入後、非協力物体である日本のロケット上段への接近・近傍運用(Rendezvous and Proximity Operations:RPO)を実証。長期間放置されたデブリの運動や損傷、劣化状況を撮影する。

 実際のデブリに安全に接近して、デブリの状況を明確に調査する世界初の試みになるという。デブリ除去を含む軌道上サービスで不可欠な要素であり、捕獲・軌道離脱を除く、すべてのRPOの過程を実証する。

 当初、2022年度内の打ち上げを予定していたが、衛星開発スケジュールを踏まえ、Rocket Labと調整した結果、打ち上げ予定時期を2023年度へと変更している。

 ADRAS-Jのミッションでは、日本政府が2021年11月に公表した「軌道上サービスを実施する人工衛星の管理に係る許可に関するガイドライン」を踏まえ、安全性や透明性のための措置を講じている。

 ガイドラインのもとで許認可を受けることで軌道上サービスに関する国の規制のあり方についても、世界に先駆けて示す先駆的なミッションになると説明している。規制の有効性を示すことで、軌道上サービスの実施が促進されることも期待できるとしている。

 アストロスケールは、2022年8月にCRD2のフェーズIIでのフロントローディング技術検討の契約相手方の1社としても選定されている。フェーズIIを実施するための実証システムの技術的成立性やフェーズII後の事業展開とその事業性に関する検討の参考にされるという。

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