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アークエッジ2機目の超小型人工衛星、通信確立と画像撮影に成功–推進剤は水

2023.02.03 17:00

飯塚直

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 アークエッジ・スペース(東京都江東区)は2月3日、同社2機目となる超小型人工衛星(キューブサット)「OPTIMAL-1」について、試験電波によって東京電機大学鳩山キャンパス地上局との通信に成功したと発表した。

 2019年に経済産業省の産業技術実用化開発事業費補助金(宇宙産業技術情報基盤整備研究開発事業)に採択され、「TRICOM衛星による超小型推進系・通信装置及び軌道上高度情報処理技術の実証事業」をテーマとして開発された。

 2018年に軌道上実証した衛星「TRICOM-1R」の3U汎用バスの機能を高めるための改良と実証を行うとともに、水を推進剤とした超小型推進系、オンボードディープラーニングボード、超小型ハイパースペクトルカメラ、「Store and Forward」(S&F)と呼ばれる通信方式などの技術実証をメインミッションとしている。

 S&Fは、地上端末から微弱電波によって送られるデータを衛星で収集し、衛星が地上管制局上空に来た時にまとめてデータを転送する技術。地上ネットワーク網がない地域での情報を簡易に収集することが可能になる。

 TRICOM-1Rは、東京大学 航空宇宙工学専攻 中須賀・船瀬研究室が開発。民生品を多く使用している。OPTIMAL-1は、TRICOM-1Rの基盤技術を応用している。

 OPTIMAL-1は、福井大学や東京大学、三菱電機とともに開発。水を推進剤として活用する推進機(レジストジェットスラスタ)は東京大学発宇宙ベンチャーのPale Blue(千葉県柏市)が開発。セーレン(福井県福井市)が衛星バスシステムを開発、製造した。

 日本時間2022年11月27日午前4時20分にフロリダ州のケネディ宇宙センターから、Space Exploration Technologies(SpaceX)のロケット「Falcon 9」に搭載された無人宇宙船「Dragon」で打ち上げられ、2022年11月27日午後9時40分頃、国際宇宙ステーション(ISS)にドッキングしている

 この打ち上げは、DragonによるISSへの商業補給サービス(Commercial Resupply Services:CRS)の26回目となるミッション「CRS-26」。打ち上げはSpace BDがサポートした。

J-SSOD取り付けはISS滞在中の若田光一氏が作業した(出典:Space BD、提供:JAXA/NASA)
J-SSOD取り付けはISS滞在中の若田光一氏が作業した(出典:Space BD、提供:JAXA/NASA)

 2023年1月6日には、ISSにある日本実験棟「きぼう」のエアロックから搬出され、小型衛星放出機構(JEM Small Satellite Orbital Deployer:J-SSOD)で宇宙空間へと放出され、地球周回軌道への投入に成功していた。

J-SSODから放出されるOPTIMAL-1(出典:アークエッジ、提供:JAXA/NASA)
J-SSODから放出されるOPTIMAL-1(出典:アークエッジ、提供:JAXA/NASA)

 放出後の一連の運用で試験電波による双方向通信を確立。通信機や太陽光パネル、姿勢制御ユニットをはじめとした主要機器のほかに推進機やS&F通信機、光モジュール、検証用のカラーカメラなどのミッション機器が正常に作動していることを確認。S&F用アンテナの展開も正常に完了しており、試験電波によるデータのアップリンクとダウンリンクにも成功している。

放出32分後にOPTIMAL-1の検証用カラーカメラが初めて撮影した画像 。今後実証予定の超小型ハイパースペクトルカメラによる画像ではない(出典:福井大学/アークエッジ・スペース)
放出32分後にOPTIMAL-1の検証用カラーカメラが初めて撮影した画像 。今後実証予定の超小型ハイパースペクトルカメラによる画像ではない(出典:福井大学/アークエッジ・スペース)

 今後、1カ月程度の初期運用を行ったのち、超小型推進機の実証、衛星上での高度情報処理(エッジコンピューティングなど)、超小型ハイパースペクトルカメラ、IoT向け長距離低電力な通信装置などの各種実証実験を行う予定。

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