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DigitalBlast、ISSでのビール酵母培養実験に向けて東大などと共同研究

2023.02.01 08:00

飯塚直

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 デジタルブラスト(DigitalBlast)(東京都千代田区)は1月31日、東京大学や奈良先端科学技術大学院大学(奈良県生駒市)、シクロ(大阪市西成区)と国際宇宙ステーション(ISS)での小型ライフサイエンス実験装置「AMAZ」を活用したビール酵母培養実験に向けた共同研究を開始したと発表した。

 DigitalBlastによると、ISSなどの微小重力環境が植物の育成に大きな影響を及ぼすことが明らかになっている一方で、月や火星といった低重力環境の植物育成への影響は現在十分に把握できていないという。

 こうした状況を踏まえ、同社は月面での生態循環維持システム構築に向けたプロジェクト「NOAH」を立ち上げた。プロジェクトの第一歩の位置付けとして、月面と同じ重力(地球の6分の1)を発生するAMAZを開発。2024年のISSへの設置・運用を目指している。

AMAZ(出典:DigitalBlast)
AMAZ(出典:DigitalBlast)

 DigitalBlastとシクロは、2022年5月に業務委託契約を締結し、2024年にISSでのAMAZを使ったビール酵母の培養実験を計画している。

 地上で宇宙環境に近い環境を模擬する微小重力環境細胞培養装置(クリノスタット)を活用した酵母実験の研究経験がある東京大学の大矢禎一氏(新領域創成科学研究科 教授)と奈良先端科学技術大学院大学の渡辺大輔氏(先端科学技術研究科 准教授)の研究グループの協力のもと、宇宙実験に向けたビール酵母の適合性試験を実施することになった。

 共同研究では、ISSで実施するビール酵母培養実験で宇宙特有の環境を考慮したうえでの最適な実験条件やISS往還時の最適な輸送条件を検討するため、地上での予備実験を実施する。実験で得られたデータをもとに宇宙実験に最適なビール酵母の品種や輸送条件などを検討する。

AMAZのプロトタイプを囲む(前列左から)DigitalBlastの仲田氏、森徹氏、東京大学の大矢氏、奈良先端科学技術大学院大学の渡辺氏、東京大学 技術員の塙奈美氏と研究チーム(出典:DigitalBlast)
AMAZのプロトタイプを囲む(前列左から)DigitalBlastの仲田氏、森徹氏、東京大学の大矢氏、奈良先端科学技術大学院大学の渡辺氏、東京大学 技術員の塙奈美氏と研究チーム(出典:DigitalBlast)

 AMAZは、宇宙環境と月面重力での植物生理の研究が主目的。装置の一部を回転させることで生じる遠心力で月面と同じ重力を再現する。回転速度を変更することでさまざまな重力環境を再現でき、同時比較が可能と説明。多様な重力下での栽培や培養を通して、生物の重力応答に関する基礎データを取得できる。現在は、プロトタイプが完成しており、地上実験を進めているという。

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