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インターステラ、ロケット「ZERO」の姿勢を制御する「ジンバル」の性能を確認

2022.12.08 08:00

飯塚直

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 インターステラテクノロジズ(北海道大樹町)はロケットの姿勢を制御する「ジンバル機構」の性能取得試験を12月6日に福島支社で実施した。12月7日に発表した。

 同社が開発する「ZERO」は、世界的に需要が大きく伸びているという超小型の人工衛星を地球周回軌道上に運ぶための打ち上げロケット(長さ25m、直径1.7m、総重量33t)。1段目にエンジン9基、2段目にエンジン1基が付く2段式ロケットを採用しており、海外のロケット会社と引けを取らない国際競争力があるとするロケットとして、初号機打ち上げに向けて開発、製造している。

 同社によると、福島支社(福島県南相馬市産業創造センター)と東京支社を中心に、エンジン1基ごとの噴射の向きを制御するジンバル機構の開発を進めてきており、2022年6月から部品単体での試験を開始。

 今回、各部品を組み合わせたジンバル機構全体として、設計通りの速度や精度、制御が達成できているかを確認するジンバル機構性能取得試験を福島支社で実施したという。

性能が確認されたジンバル機構(出典:インターステラ)
性能が確認されたジンバル機構(出典:インターステラ)

 ジンバル機構は、伸縮することでエンジンの噴射の向きを制御するアクチュエーター2基と、エンジン部を支えるジンバルジョイントなどで構成。計3回の宇宙到達実績のある観測ロケット「MOMO」の経験やノウハウを生かして自社で開発しており、スピーディーで低コスト、ZEROに最適化した設計を実現したという。

 アクチュエーターは油圧式ではなく、最新技術である電動モーター式を採用する点も特徴で、部品の簡素化と制御機能の強化を図っている。

 福島支社と東京支社ではジンバル機構のほか、人工衛星を収納するフェアリング部、ロケットの頭脳に当たるアビオニクス(電子機器)も開発、製造している。

 今回の実験では、規定の性能通り出力できることを確認。同試験は、福島支社で初めての重要試験になるという。

ZEROのコンポーネント図(出典:インターステラ)
ZEROのコンポーネント図(出典:インターステラ)

 福島県では、原発事故で失われた浜通り地域の産業を回復するため、新たな産業基盤の構築を目指す国家プロジェクト「福島イノベーション・コースト構想」が進んでおり、同社は2021年7月に宇宙輸送機器メーカーとして初めて同県に進出。2022年2月には、福島県南相馬市と連携協定を締結している。

代表取締役社長 稲川貴大氏(左、出典:インターステラ)
代表取締役社長 稲川貴大氏(左、出典:インターステラ)

 今回の試験は福島県の「地域復興実用化開発等促進事業」で採択されたテーマ「民間企業による低コストな超小型人工衛星打ち上げロケットの開発」の一環で実施したものとなる。

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