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水蒸気で進む–キューブサット「EQUULEUS」、ラグランジュ点に向かう軌道に投入
2022.11.28 16:15
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は11月26日、米航空宇宙局(NASA)の「Artemis」計画の初号機「Artemis I」で打ち上げられた超小型探査機(キューブサット)「EQUULEUS」の予定していた一連の機能確認作業が完了したと発表した。
軌道変換制御と月フライバイ前後の軌道修正の結果、計画通り11月22日に月フライバイを実施し、地球-月第2ラグランジュ点(地球から見て月の裏側のL2点=Earth-Moon L2 point:EML2)に向かう所定の軌道への投入を確認したという。
EQUULEUS(EQUilibriUm Lunar-Earth point 6U Spacecraft)は、地球-月ラグランジュ点への航行を通じて、太陽-地球-月圏での軌道操作技術を実証する超小型深宇宙探査機。水を蒸気として排出するエンジン「AQUARIUS」(AQUAResIstojet propUlsion System)を搭載しており、水を推進剤とする推進系による地球低軌道以遠での軌道制御成功は世界初になるという。
EQUULEUSはArtemis Iのロケット「Space Launch System(SLS)」に搭載された相乗りキューブサット10機のうちの1機。太陽や月の重力を利用することでリソース制約の厳しいキューブサットでも実現可能な軌道変換能力で、EML2へ効率的に航行することを目指している。
ロケットから分離され月フライバイ軌道へ投入されたあと、小さな速度変化で約1週間後の月フライバイ時の近月点(月の中心からの距離が最も近い点)を調整し、フライバイ後に月に再会合できる軌道へ遷移。
その後、約6カ月をかけ、複数回の月スイングバイ(月の重力を使った軌道変更)を経由して、EML2周りの周期軌道へ到達し、3つの科学観測を実施するという。
実施するのは、地球の磁気圏プラズマの全体像を地球から離れた距離から極端紫外光で撮像するミッション、月の裏面での月面衝突閃光の観測、シスルナ空間(地球から月軌道周辺までの空間)におけるダスト環境の評価の3種。
今後、初期運用フェーズから定常運用フェーズへ移行し、約1年半かけ、ラグランジュ点に向かう予定。