インタビュー

宇宙ビジネスを議論する「SPACETIDE」石田代表に聞く–宇宙ビジネスの過去と未来

2022.07.13 08:00

藤井涼(編集部)田中好伸(編集部)阿久津良和

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 民間主体の宇宙ビジネスでは、政府の役割は法整備、技術開発支援、投資、顧客としてのサービス購入などが期待されます。他方で、宇宙ビジネスが広がる時代でも、宇宙探査や先端的な技術研究開発など民間がリスクを取れない宇宙活動や安全保障などに関する宇宙活動は引き続き国の大きな役割です。

宇宙への理解度を深めてほしい

――現在、数多くの宇宙ビジネスが始まっています。関心を持っている分野はありますか。

 切り口によって異なりますが、日本は大型や小型ロケット、ISS、観測衛星、測位衛星と多岐にわたり、(宇宙ビジネスは)多くの可能性を秘めています。ただ、個人的には資金力によるパワーゲームではないニッチな分野の方が日本の独自性と強みが出ると考えています。

 世界的には、最も大きな市場のある米国に参入をする。あるいは米国でビジネスを立ち上げるという動きもあります。Musk氏も南アフリカ共和国出身。米国に移住して起業しました。過去10年程度で成功した宇宙スタートアップ企業の大半は早期に米国で拠点を構えています。日本のスタートアップ企業にとっても、米国市場にどう向き合うかは大事な観点だと思います。

 例えば、政府の委員会では光通信技術も話題になっています。通信技術や光学系の技術は、日本は他産業で培われてきたものも多数あります。ただ、色々な分野でレッドオーシャン化が始まっているので、資本力だけではなく勝負する分野の選択が重要ではないでしょうか。

――宇宙ビジネスはスタートアップ企業だけではなく、ソニーなど大企業も参入するようになりました。彼らに助言があれば一言お願いします。

 宇宙ビジネスに関心を持つ企業は二つのパターンに分かれます。一つは会社としてのブランディングや挑戦の気運を高めたいという企業。もう一つは営々データや通信を使い倒して自社の事業を強化したいと考える、あるいは自社の技術を宇宙ビジネスに転用したいとする企業。

 この二つは活動予算がどの部署にひも付いているのかでわかれます。前者の場合は広報部門が予算を出しているケースが多いですね。後者の場合は事業部門や研究開発部門が投資するケースが多いです。いずれの場合でもお伝えしたいのは「途中であきらめないでほしい」の一言です。

 宇宙ビジネスを面接で例えると、履歴書はよいけど面接するとガッカリしてしまう。期待値が高い分、実際に参入してみて、色々な壁にあたることで、関心度の低下が大きいのです。宇宙は理解度を深めないとビジネス活用も難しく、また収益を上げるのに時間がかかります。ソニー、本田技研工業、三井物産など多くの大企業が宇宙ビジネスに参入していますが、皆さんの(宇宙ビジネスに対する)事業計画は10年くらいの長期スパンで捉えています。

 ですが、一般的に企業の中期経営計画は3~5年程度。短期の収益化等が求められるケースも多いです。だからこそ、宇宙ビジネスに参入される企業には「途中であきらめないでほしい」というお願いがあります。

 ただ、背景には宇宙ビジネス業界の課題も否定できません。色々な業務の企業活動のスピードに宇宙業界が追いついていないから。例えば「XXXというデータが取れます」と言っても、そのデータを取るための衛星を打ち上げるのに数年かかりますというケースもあります。

 多様な業種が宇宙ビジネスに関心を持たれるのも日本の特徴といえます。国民性でしょうか。

 例えば、弊社がカンファレンスを開催して500~600人の来場者が訪れると、異業種企業は35~36%。宇宙ビジネス関係者は25%、それ以外は政府関係者や研究者、エンジニアや学生でした。さらに異業種企業の業種も通信や空港、プラント、自動車も多種多様です。

 弊社のカンファレンスのスポンサー企業もANAホールディングス、本田技術研究所、横河電機、三菱電機、ソフトバンク、損害保険ジャパンと枚挙に暇がありません。何かしら(日本人には)秘められた国民性があるのでしょうね。

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 SPACETIDEは7月19日から3日間、都内でオンライン&オフラインカンファレンス「SPACETIDE 2022」の開催を予定している。国内外約80人の登壇者により、商業宇宙旅行や通信衛星コンステレーションなど事業化の道筋が見え始めた宇宙ビジネスの最前線を議論する。

一般社団法人SPACETIDE 共同設立者 代表理事兼CEO 石田真康氏。宇宙ビジネスの発展と拡大を目的に年次カンファレンス「SPACETIDE]の主宰など産業横断的な活動を実施。A.T. Kearneyで宇宙業界、自動車業界を中心に15年以上の経営コンサルティング経験。内閣府 宇宙政策委員会 基本政策部会 委員として宇宙産業振興を支援。著書に「宇宙ビジネス入門 Newspace革命の全貌」(日経BP社)。2003年 東京大学工学部卒
一般社団法人SPACETIDE 共同設立者 代表理事兼CEO 石田真康氏。宇宙ビジネスの発展と拡大を目的に年次カンファレンス「SPACETIDE]の主宰など産業横断的な活動を実施。A.T. Kearneyで宇宙業界、自動車業界を中心に15年以上の経営コンサルティング経験。内閣府 宇宙政策委員会 基本政策部会 委員として宇宙産業振興を支援。著書に「宇宙ビジネス入門 Newspace革命の全貌」(日経BP社)。2003年 東京大学工学部卒

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