特集
建設機械やドローンを操縦–「IoT」を拡大できる衛星通信の可能性
2022.07.26 08:00
ドローンの開発・製造・運用を一貫して手掛けるスペースエンターテインメントラボラトリーは、飛行艇型ドローン「HAMADORI」シリーズに取り組んでいる。
同社の金田氏は「平らで開けた日本の水面に着目した。(HAMADORIは)飛行機と同じ固定翼を備え、大きな揚力を生み出すことで、(一般的な)複数のプロペラを備えるドローンと比べて、飛行距離や長時間運用を実現できる。デメリットは空中でのホバリングや垂直の離着陸は不可能な点。(開発中の)HAMADORI 6000は海洋系の観測・監視を行う方々から需要があり、(飛行時間や距離、運搬)性能の向上が求められている。現在は衛星通信機器の実装に取り組んでいる最中だ」と説明した。
米衛星通信企業のKymetaは、2017年にアンテナサブシステムモジュール「mTenna(u7) ASM」と、メタマテリアル技術を利用した、衛星用ターミナル&アンテナ「KyWay Terminal」の販売を開始した。
主力製品の一つである「HAWK u8」について同社のChesen氏は「最大の特徴は接続性。(精密機器の利用が厳しい)工事現場でも利用できる頑丈な防水ケースを採用した。現在u8は静止衛星とコミュニケーションしているが、2022年末に利用(可能な)衛星のアップデートを予定している」とアピールする。
遅延という課題
各社のプレゼンテーションが終了し、モデレーターが送信データの内容や量、通信速度で付加価値が左右されるか尋ねると、日立建機の枝村氏は「一つは(前述した)建機の自動化。自動運転は上位のシステムや建機同士で共有するため、(周辺の)画像や地形データはなるべく間引いて軽量化している。当然ながら制御系は100ミリ秒レベルの速度が求められるので、高速・大容量・低遅延がいくらそろっても足りない『クリティカルIoT』の世界だ。もう一つは建機の寿命。設計寿命は十数年だが、平均で二十数年は使える。収集したデータをもとに保守サービスを行っているが、(対象が)世界中におよぶので同じ通信方式を採用してほしい」と述べた。
スペースエンターテインメントラボラトリーの金田氏も「ドローンに取り付けたセンサーからセンシングデータ、機体の姿勢情報や周辺映像を送信している。遠隔操作になるが、あたかもパイロットが搭乗して操縦したいという需要があるため、通信は重要」であると強調。現在開発中のHAMADORI 6000は往復400海里まで航続できるが、「当然(海上に)通信インフラはなく衛星通信が必要になる。現在、静止衛星とのデータ受信を試験しているが、厳しい」(金田氏)と衛星通信の現状を説明した。