特集
持続利用が可能な宇宙へ–周回軌道上のごみ拾いに取り組むグローバルベンチャー
2022.07.06 13:00
5カ国で事業展開、4つの軌道上サービス開発に取り組む
アストロスケールでは、日本の他にアメリカ、イギリス、シンガポール、イスラエルに拠点を置き、約300人の従業員が働いている。「将来の世代の利益のための安全で持続可能な宇宙開発」というビジョンのもとで、技術開発、ビジネス目標の実現、宇宙政策への提言を行うことを事業ミッションに掲げ、デブリ問題においては、「技術開発」「事業モデルの構築」「ベストプラクティス・ルール作りへの貢献」に取り組んでいる。現在4種類の軌道上サービスの開発に取り組んでおり、順次技術実証を経て商用サービスに移行していく予定となっている。
1つめは、運用を終了した衛星を除去する「EOL」(終活)サービス。衛星にあらかじめ同社の「ドッキングプレート」という部品を搭載しておくと、その衛星が故障または運用終了したときに、回収機が衛星を回収して軌道から除去することができる。昨年技術実証機を打ち上げて実験をしており、2024年にサービスインを予定しているとのことである。
2つめは、既存大型デブリの除去を行う「ADR」サービス。同じスペースデブリ除去のなかで、EOLはこれから民間企業が打ち上げる衛星を対象にするのに対し、ADRはすでに打ち上げられた、大型な国・政府レベルのロケットが主な対象となる。現在JAXAのプロジェクトにおいて、日本由来のロケットを対象としたプログラムに取り組んでいるという。
3つめは、衛星の様子を監視・点検する「ISSA」サービス。宇宙の状況監視をしている専門会社と連携し、宇宙空間にあるデブリの近くまで寄って破損や劣化状況を監視し、データを提供するサービスである。
4つめは、主に静止軌道上の衛星を対象とした、衛星の寿命を延長させる「LEX」サービス。静止軌道上の衛星は、燃料がなくなると軌道高度が維持できなくなってデブリ化するが、その際に「LEXがくっついて軌道を維持することで、衛星を使い続けられるようにするサポートサービス」(伊藤氏)となっている。
世界初のデブリ除去技術実証衛星の打ち上げに成功
先述した4つのサービスの基本になっているのが、「RPO(ランデブー・近傍運用技術)」という技術群である。これは、対象物に安全・確実に近づく技術で、通信や姿勢制御を行っていないデブリに正確・安全に近づくのは非常に難しい。