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「中古衛星市場」がもたらす可能性–宇宙ビジコン「S-Booster」受賞技術者の挑戦

2022.05.16 08:00

林公代

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 今回のRASE-2の譲渡と事業実証への取り組みは「宇宙産業に参入する新たなプレーヤーを増やし、新しいビジネスを創っていきたい」というJAXA新事業促進部の狙いから生まれている。衛星に関わったことがない方が衛星を運用すれば、考えてもいなかった課題や制約が生じることがあるだろう。そんな時、JAXAが技術サポートできるかもしれない。

2021年11月9日に打ち上げられたRAISE-2(提供:JAXA)
2021年11月9日に打ち上げられたRAISE-2(提供:JAXA)

 ちなみに今回の衛星(RAISE-2)は無償で譲渡されることを前提としている。ただし移管後の運用の費用については譲渡先の企業が負担する予定だ。公募の説明会(3月開催)に参加した企業は約10社。JAXAの想定より多く、宇宙業界以外の多様な業界から応募があったという。今後、議論を重ねて11月ごろには譲渡先の企業を選定する予定だ。

 「新しい事業者の皆さんに関心をもっても頂けたし、関心の度合いがわかりました。実際に民間事業者の方々に衛星を運用してみて頂いてどうだったか、課題を抽出していくことが、これから衛星中古市場を大きくしていく上でまずは大事と思っている」(市川氏)

 小型実証衛星のRAISEは今後も3号機、4号機と続く予定だ。

 「継続した取り組みにできるように布石を打つ必要がある。衛星の2次利用を踏まえて、開発段階から2次利用用のカメラなどの汎用性のあるミッション機器があらかじめ搭載されていることが大事。そうすれば譲渡を受けた企業は利益を上げるデータなどが取得できるでしょう。衛星の付加価値も上がって、JAXAも有償で譲渡し、次号機の開発費に寄与できるかもしれない」(市川氏)

S-Booster2019で最終プレゼンテーションを行う市川千秋氏(提供:内閣府)
S-Booster2019で最終プレゼンテーションを行う市川千秋氏(提供:内閣府)

 JAXAは今後も定期的に大型衛星を打ち上げていく。それらの衛星のセカンドキャリアも今後、多様化していくだろう。航空機は機体数増加とともに中古市場が発展、現在流通している航空機の約半数が中古だという。「同じ現象が衛星業界でも起きようとしている」と市川氏。

 人工衛星の世界も変革期を迎えている。燃料がなくなったら衛星の寿命が尽きると書いたが、宇宙で衛星に燃料補給できるとしたら中古衛星の価値がさらに上がる? その詳細は次回。

 ちなみに、市川氏が入賞した宇宙ビジネスアイデアコンテスト「S-booster 2022」は6月20日まで応募を受け付けている。

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