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宇宙探査の技術を家庭に応用–NASAが民間と共同開発中の人型ロボット「Astra」
2022.12.23 08:00
宇宙で任務を遂行するApolloの能力は、競合他社が開発している他の人型ロボットとの差別化要素だ。
「地球上で使用する人型ロボットを開発している企業もあるだろう」とAzimi氏。「だが、そうした企業はまだ、宇宙での作業に必ずしも興味を持っているわけではない」
近い位置にある競合は、同じく人型ロボットの開発に取り組んでいるTeslaだ。同社の「Optimus」(別名「Tesla Bot」)は5フィート8インチ(約172cm)のロボットで、45ポンド(約20kg)の荷物を運び、145ポンド(約65kg)の荷物を持ち上げるなど、人間の作業を実行することができる。
では、なぜTeslaとApptronikの人型ロボットがどちらも人間のような見た目にデザインされているのだろうか。まるで、SF映画に登場する悪役ロボットに意図的に似せてデザインしているように思える。実際のところ、これらのロボットが人型なのは、人間のために設計された世界で最大限に能力を発揮できるようにするためだ。
「ここでの最初の目標は、極めて有用な汎用ロボットの構築だ」とCardenas氏は述べた。「作業をして、人間の暮らしや働き方を改善するロボットが欲しいなら、人型にすれば、人間と同じ道具を使用し、人間のために構築された環境で稼働することができる」
ロボットに世界を乗っ取られるのではないかと、まだ不安に思っているとしたら、その気持ちはよく理解できる。OptimusとApolloの知名度はそれほど高くないが、「ターミネーター」のことは誰もが知っている。しかし、こう聞けば安心できるだろう。次世代の汎用ロボットは、人間に似せて作られてはいるものの、人間の知性を持つ段階には程遠い。
これらのロボットのOSには、「Siri」や「Alexa」などの一般的なアプリケーションと同じ深層学習技術が使われているが、現在のバーチャルアシスタントは世界を乗っ取れるほどの知性を持っていない。
「バーチャルアシスタント、特に音声認識機能を備えたアシスタントを使ったことがあるなら、やってほしいと頼んでいる内容を理解してくれないことがどれだけあるか、考えてみてほしい」とAzimi氏は語る。「ロボットを人型にしたからといって、突然、人間の知性が宿るわけではない。同じシステムを使用しているので、やはり同じ問題を抱えている」
Azimi氏にとって、より差し迫った懸念は、ロボットアシスタントが目の前の作業を確実に実行できるようにすることだ。自動通話システムを利用したことがある人なら誰でも知っているように、役に立たないロボットほどイライラするものはない、とAzimi氏は指摘する。
「そうしたロボットは、実際に人間を助けるのではなく、人間が必要なものを手に入れるのを妨げるように実装されている」(Azimi氏)
ApptronikとNASAが多様な環境向けにApolloの準備を進めていく中で、さらに多くの人型ロボットが発売されたとしても不思議ではない。
「今から10年後、20年後には、ロボットのない生活を想像するのが難しくなっているだろう」とCardenas氏は述べた。
(この記事はZDNet Japanからの転載です)