ニュース
京大、木星で起きた「ツングースカ大爆発」級の閃光を観測–直径20~30mの小天体が衝突
2022.09.13 14:34
京都大学の研究チームは、木星と衝突した小天体による閃光現象の観測に成功した。直径約20~30m、総質量4000トンほどの天体が木星の大気圏に突入したとみられ、その衝突規模は「地球では過去100年以上目撃されていなかった」ほど大きなもの、と説明している。
巨大で重力の強い木星では、引き寄せた周囲の小天体との衝突が時折発生する。衝突に伴う閃光を観測できると、こうした小天体が木星軌道付近にどの程度存在するのか知る手がかりになる。ただし、衝突は極めてまれで、予想もできず、閃光の継続時間も数秒ほどと短いため、観測事例はアマチュア天文家が偶然捉えたものに限られていたそうだ。
そこで、京大の白眉センター特定助教、有松亘氏らの研究チームは、閃光現象を詳細に解析することを目指し、閃光検出に特化した観測システム「Planetary ObservatioN Camera for Optical Transient Surveys(PONCOTS:ポンコツ)」を開発した。PONCOTSは、口径0.28mの市販望遠鏡に3台のCMOSビデオカメラを取りつけ、可視域の最大3波長で同時動画観測が可能なシステムである。
研究チームは、このシステムを使って日本時間2021年10月15日午後10時14分に発生した閃光の観測に成功。CMOSカメラで捉えた2波長のデータと、ゴースト像から別の1波長のデータ、計3波長で閃光を同時観測できた。これは、史上初の快挙だとしている。
3波長の動画データを解析した研究チームは、太陽系外縁部から飛来した直径約20~30m、総質量4000トンほどの小天体が秒速60kmの相対速度で木星の大気圏に突入した、とみている。衝突の爆発規模は、2013年にロシアのチェリャビンスク地方で観測された小天体の落下に比べ約4倍大きく、1908年にシベリアで発生した天体の大気圏突入による「ツングースカ大爆発」と同程度と考えられる。
なお、木星に対する衝突より頻度は小さいものの、地球でも数十m級の小天体との衝突は発生しており、火球として観測される。火球による被害が発生することもあり、そのリスクを知るためにも、木星への天体衝突を観測することには意義がある、としている。