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天の川銀河の地図を作る宇宙望遠鏡「ガイア」、約11年で運用終了–2020年代末までに全データ解析

2025.01.16 15:06

塚本直樹田中好伸(編集部)

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 欧州宇宙機関(ESA)は現地時間1月15日、銀河系の星をマッピングしてきた宇宙望遠鏡「Gaia」(ガイア)が科学運用を停止したと発表した。

 約11年前の2013年12月にフランス領ギアナの宇宙港から「Soyuz FG/Fregat」(ソユーズFG/フレガート)ロケットで打ち上げられたGaiaは、太陽系が属する天の川銀河の精密な「地図」を作る目的でESAが運用している宇宙望遠鏡。地球から見て太陽の反対側、つまり地球より外側のラグランジュ点2(L2)付近で銀河系内外の約20億個の星や天体を観測してきた。

 観測したデータを解析したデータセットの最新版である「Data Release 3(DR3)」は2022年6月にリリース。DR3は、天の川銀河にある恒星20億個のデータや太陽系内の小惑星、系外銀河などの情報を含み、恒星の化学組成や温度、色、質量、年齢、視線速度という情報を追加。80万個以上の二重星、太陽系の衛星と小惑星、数百万に上る系外銀河とクエーサーに関するデータも含んでいる。

 ESAによれば、Gaiaが運用を終了した理由としては、回転のために使用している冷却ガス推進剤が不足しているためだという。打ち上げ以来、1日に約12gの推進剤を消費してきた。

 Gaiaの運用チームは、5.5年分のデータを解析したデータセット「Data Release 4(DR4)」を2026年半ばまでに発表する予定だ。Gaiaから全てのデータがダウンロードされると、10.5年分の全ミッションデータを解析したデータセット「Data Release 5(DR5)」の作業が始まり、これは2020年代末までに公開される予定だ。

 Gaiaのデータを頻繁に利用しているという天文学者のKareem El-Badry氏は海外メディアのSpace.comに「Gaiaのデータのうち公開されたのは全体の3分の1以下であり、最終データが科学研究に利用できるようになるのは2030年代になるだろう」と述べている。

 ESAによると、科学運用が終了したGaiaは重力的に安定している地点であるL2にとどまっている間に数週間程度の技術試験が実施される予定。「将来の宇宙ミッションの設計に役立つ可能性を秘めた、いくつかの宇宙機と観測機器のコンポーネントの挙動をより詳細に研究する」という。数週間の技術試験を終えてからGaiaは、L2を離れ、2025年3月にも地球の影響圏から離れた軌道に投入され、ほかの宇宙機との干渉を防ぐとされている。

(出典:ESA)
(出典:ESA)

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ESA発表
Gaia概要
Space.com

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