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月着陸機「SLIM」、岩石の10バンド分光撮影に成功-「カンラン石」分析で月の起源に迫る
2024.02.05 10:35
宇宙航空研究開発機構(JAXA)の宇宙科学研究所(ISAS)と会津大学、立命館大学は、「小型月着陸実証機(SLIM)」のマルチバンド分光カメラ(MBC)で撮影した岩石の映像を公開した。
SLIMに搭載されているMBCは、月面の岩石や砂(レゴリス)を異なる10種類の波長帯で撮影できる。今回の観測では、333枚のフルスキャン画像を異なる波長で2回、岩石やレゴリスの高解像度10バンド観測を13カ所の観測対象に対して実施。これにより、計画当初予定していた10バンド分光観測を終えたとしている。
MBCによる観測の目的は、月のマントルに由来する「カンラン石」の分析。この分析結果を地球のマントルと比較することで、月が「ジャイアント・インパクト」で形成されたかどうかなど、月の起源を解明する手がかりが得られる。これまでの月面探査で月の岩石が地球に持ち帰られたことはあったが、その中に月のマントルに由来するカンラン石は含まれていなかった。このため、SLIMの探査は世界初の試みとなる。
SLIM(Smart Lander for Investigating Moon)は、将来の月惑星探査に必要な高精度着陸技術を実証するための小型探査機だ。月面の狙った場所へのピンポイント着陸技術を実証することが目的。100m以内の着陸誤差を目指し、国産基幹ロケット「H-IIA」47号機で2023年9月7日に打ち上げられた。
月面着陸は1月20日に成功。これは日本初の月面着陸で、世界でも5カ国目の快挙となった。接地した位置は、着陸目標地点から東に55m程度の地点だった。
ただし、計画では上を向くはずだった太陽電池パネルが西に向いてしまい、着陸直後に発電ができなかった。そこで、バッテリーを切り離し、電源を切って休眠状態とし、太陽が西側に移動して太陽電池パネルへ光が当たるのを待った。
その後、太陽電池パネルが発電を始めたことで、1月28日に運用を再開して、分光観測を実施した。
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ISASプレスリリース