気象衛星「ひまわり8号」から「植物の熱中症」を診断--農業や林業、防災で活用

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気象衛星「ひまわり8号」から「植物の熱中症」を診断–農業や林業、防災で活用

2023.05.18 14:43

佐藤信彦

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 千葉大学を含む国際研究チームは、気象衛星「ひまわり8号」の観測データを活用し、地上の植物がどの程度乾燥しているか従来より詳細に検出できる手法を開発した。

 農業や林業で植物を適切に育成するほか、森林火災を防ぐため、水分不足にある植物の分布を的確に把握する必要がある。そうした植生環境モニタリング手法として、これまでは極軌道衛星で観測された分光植生指標が一般的に利用されてきたそうだ。

 ただし、分光植生指標は、植物が変色や枯死に至る前段階である、高温や乾燥などの環境ストレスを受けた状態の検出が難しかったという。さらに、極軌道衛星だと同一地域の観測頻度は数日に1回と限られ、急速な環境変化を捉えられない。

 これに対し、ひまわり8号なら、晴れていれば同一地点の地表面温度を10分ごとの高頻度で観測できる。研究チームは、ひまわり8号で得られる地表面温度の日変化情報を植生の乾燥状態を検出に活用できるかどうか検証した。

どのデータが検出に使えるか検証(出典:千葉大学)
どのデータが検出に使えるか検証(出典:千葉大学)

 その結果、日最高温度(その日の最高気温)と日較差(その日の最高気温と最低気温の差)から、乾燥状態の検出が可能と確認した。分光植生指標では判別困難な、乾燥化が起きている状態を詳細に検出できるという。

 今回の手法を気候条件の異なる地域に拡張したところ、特に半乾燥地域で日最高温度と日較差の増大に応じて光合成量が低下する傾向もみられたという。植物は日中の高温・乾燥環境で光合成活動を休止する。「昼寝現象」と呼ばれる、この現象を衛星から広範囲に検出することは困難だったが、今回の手法を活用することで新たに検出できる可能性があるという。

 ひまわり8号と同等の観測スペックを持つ他国の気象衛星にもこの手法を展開すれば、世界規模の気候変動対策や環境保全にも貢献できるとしている。

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