ニュース

NECなど、SARのデータから標高を監視する技術開発–河川の土砂移動量を管理

2022.11.01 16:45

飯塚直

facebook X(旧Twitter) line

 NECと建設コンサルタントのオリエンタルコンサルタンツ(東京都渋谷区)は11月1日、共同で衛星に搭載された合成開口レーダー(SAR)で取得したデータから標高をモニタリングする技術を開発したと発表した。SARは、衛星から地表面にマイクロ波を照射し、その反射波を受信して画像を生成する技術。

 近年、温暖化の進行がもたらす気候変動の影響などにより、全国各地で水災害が激甚化、頻発化。国土交通省や流域自治体などでは、流域治水の取り組みを加速させている。

 流域治水の取り組みでは、流域の状況を把握するために定期的に監視、観測しているが、流域が広範にわたるため、コストや労力の観点から十分なデータの取得に至っていないことが課題となっている。

 流域治水で的確な治水を管理するためには大雨などの事象発生後の土砂移動や生産源を把握することが重要となるため、タイムリーなデータの取得を求められるという。

 こうした課題に対してNECとオリエンタルコンサルタンツは、広範性や周期性を特徴とする衛星SARに着目。これまで経時変位(時系列差分干渉解析)として利用されてきた技術を発展させ、標高と標高をもとに体積を算出する解析手法を確立。土砂移動量などの算出をより安価でタイムリーにモニタリングする技術を開発した。

今回開発した技術の概要(出典:NEC)
今回開発した技術の概要(出典:NEC)

 同技術では、衛星SARで撮像したデータを解析し、対象エリアの標高を面的に算出。次に、土砂移動後の撮像データを解析して、面的な高さを算出するという。この2つの面的高さデータを差分解析することで、土砂移動量の算出を実現したと説明する。

 同技術を活用することで、流域内での土砂の経時変化を体積として把握可能となるため、定量的な土砂量と、いつ、どこで生産土砂量が発生したかなどの客観的事実に基づいて、さまざまに対策を立案できるようになる。

流砂系で一貫した総合的な土砂管理に向けた未来像(出典:NEC)
流砂系で一貫した総合的な土砂管理に向けた未来像(出典:NEC)

 例えば、土砂堆積で生じる川の流れの悪さ、土砂堆積速度の推定に基づく砂防堰堤の計画的な除石計画の立案など、これまで定量的な予測、計画が難しかった事象の定量化に活用できるとしている。今後は、降雨後の土砂移動量を予測する技術の開発に向けて、引き続き連携を強化する方針だという。

Related Articles