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iPhone 14の衛星通信が実現できた背景–Globalstarの衛星群を活用(石川温レポート)

2022.09.10 08:00

石川温

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 Appleが米国時間9月7日に発表した「iPhone 14」シリーズは「衛星経由によるSOS送信」ができる点がサプライズであった。

 衛星とスマートフォンの直接通信は、楽天モバイルとAST Space Mobileによる「スペースモバイル計画」や、Space Exploration Technologies(Space X)と米T-Mobileによる計画などがあるが、どちらも実用化は2023年以降とされている。

 そんな中、Appleの衛星経由によるSOS送信は今年11月に米国とカナダで提供される。

 Appleはこの機能を実現するために、すでに衛星ビジネスを手がけているGlobalstarと手を組んだ。Globalstarによれば、Appleは600億円を超える規模での出資を行い、Globalstarはネットワークキャパシティの85%をAppleに割り当てる。必要な人員、衛星、ソフトウェア、周波数などのリソースは、Appleが優先的に使える。

 Globalstarの通信サービスは、2013年に打ち上げた24個の地球低軌道(LEO)周回衛星で構成されている。地上1414キロ(878マイル)上空で動作している。

 すでに、極域および海洋中央部などを除く、地球表面の80%以上からデータの受信が可能だ。つまり、サービス開始当初はアメリカとカナダしか提供されないが、日本の上空でも衛星は飛んでいることになる。

日本のiPhoneもハードウェア的には衛星通信に対応

 まず、米国とカナダでサービスが提供される理由としては、衛星に飛んだSOSを地上局で受け、その救援要請を関係省庁に伝えるセンターが必要になるため、その準備が整ったのが、この2カ国だったということのようだ。

 つまり、日本でサービスを提供するには、SOSメッセージを受け、警察や救急に出動を要請できるセンターの設置が必要になる。ちなみに筆者が確認したところ、米国当局からの許認可は取得済み。あとは衛星のソフトウェアアップデートをかければいいという状況にあるという。

 本来、たくさんの衛星を飛ばせば、処理できるトラフィック量が増えるため、データ通信や音声通信もできるようになるだろう。しかし、Globalstarは24個しか飛ばしていないため、扱えるデータ量には限界がある。そのため、AppleとしてはSOS送信に機能を限定し、さらに飛ばすメッセージのデータ量も圧縮できる仕組みを開発したと思われる。

ユーザー自らがテキストを入力するのではなく、SOSの内容をタップで選択して送信する仕組み

 iPhone 14と衛星間の通信には「B53」と「n53」という周波数帯を用いている。同周波数帯は米国で売られるiPhone 14だけでなく、日本で売られるiPhone 14も対応している。つまり、日本で購入したiPhone 14を持ってアメリカやカナダを訪問し、山を登って万が一遭難した際、圏外であっても衛星経由で現地の救助を求めることができるという。

 

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