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NASA、月輸送でファイアフライと260億円で契約–探査車2機を運ぶ初の試み

2025.08.07 16:14

塚本直樹田中好伸(編集部)

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 米航空宇宙局(NASA)は、2機の探査車(ローバー)と3つの科学機器を月の南極に送り届ける契約を米Firefly Aerospace(ファイアフライ・エアロスペース)と1億7670万ドル(約260億円)で結んだ。米国時間7月29日に発表した。

 今回の契約は、NASAが月への貨物(ペイロード)輸送を民間企業に有償で委託する「商業月面輸送サービス(CLPS)」の一環。今回発表された契約は、Fireflyにとって5件目のタスクオーダーであり、同社のCLPSとしては4回目になる。

 Fireflyにとって4回目のCLPSとなる月着陸ミッション「Blue Ghost Mission 4」は、1回の飛行で2機のローバーを輸送する初の試みになる。契約期間は2030年3月29日まで。NASA科学ミッション局 探査担当副長官代理のJoel Kearns(ジョエル・カーンズ)氏は「CLPSを通じて、企業が主導する月探査の新時代を迎えている」と述べている。

 Blue Ghost Mission 4で月まで運ばれるローバーは、NASAのエイムズ研究センターなどが開発する「MoonRanger」とカナダ宇宙庁(CSA)が開発するもの。加えて、月周回軌道からレーザー測距するための「レーザー反射鏡アレイ」(Laser Retroreflector Array:LRA)などの科学機器も運ぶ。

Blue Ghost Mission 4で月に着陸したBlue Ghostのイメージ。2機のローバーがいる(出典:Firefly)
Blue Ghost Mission 4で月に着陸したBlue Ghostのイメージ。2機のローバーがいる(出典:Firefly)

 Fireflyの月着陸ミッションは着陸船(ランダー)「Blue Ghost」(ブルーゴースト)を活用。第1弾である「Blue Ghost Mission 1」(「Ghost Riders in the Sky」)でBlue Ghostは3月に月着陸に成功。NASAから委託された10個のペイロードを月の表側に送り届けた。

 第2弾ミッション「Blue Ghost Mission 2」は2026年の打ち上げが計画されており、月の裏側への着陸を試みる。第3弾ミッション「Blue Ghost Mission 3」は2028年の打ち上げが計画されており、未踏であるグリュトゥイゼンドームを調査する。

 第2弾以降では、輸送機(トランスファービークル)「Elytra Dark」(エリトラ・ダーク)を活用する。Elytra DarkとBlue Ghostは連結して宇宙を飛行(Elytra Darkのエンジンで推進する)。月周回軌道に到達後、Blue GhostはElytra Darkから分離して月着陸に挑む。

 Elytra Darkは、月を周回する衛星となり、Blue Ghostと地球との通信を仲介する。第4弾で月を周回するElytra Darkは3機となり、コンステレーションを構築して月面撮影サービス「Ocula」を提供する計画となっている

Blue Ghostを月まで連れて行くElytra Dark(出典:Firefly)
Blue Ghostを月まで連れて行くElytra Dark(出典:Firefly)

関連情報
NASAプレスリリース
Fireflyプレスリリース
CLPS(NASA説明)
Blue Ghost Mission 2
Blue Ghost Mission 3
Blue Ghost Mission 4
Elytraシリーズ
Space.com

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