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インターステラ、トヨタとも業務提携–自動車量産の知見をロケット開発に生かす
2025.08.05 17:00
インターステラテクノロジズ(北海道大樹町)は、トヨタ自動車やウーブン・バイ・トヨタとの業務提携で合意書を締結した。モノづくりでの幅広い連携を通じて強固な製造体制を確立して高頻度、低コストで打ち上げられる宇宙輸送サービスを実現するという。8月4日に発表した。
小型衛星用ロケット「ZERO」を開発しているインターステラとウーブン・バイ・トヨタは1月に資本業務提携を締結。ロケットを1点モノの生産から高頻度打ち上げに耐えうる工業製品に構造変革させるための取り組みを具体化するため、今回トヨタを含めた3社による合意書を新たに締結した。8月からトヨタから出向者をインターステラに派遣、ZEROの初号機開発から事業化に向けた取り組みまで幅広く支援するという。
インターステラはトヨタが長年培ってきたモノづくりの知見や強みを活用することを見据え、トヨタとウーブン・バイ・トヨタが静岡県裾野市で開発するモビリティのテストコースである「Toyota Woven City」のインベンターとして参画する。開発場所は引き続きインターステラの拠点を中心にする。インベンターに参画したのは、スタートアップとしては初という。
日本の宇宙開発は、市場規模の小ささから設備投資や人的資源に制約があるのが現状と説明。今回の提携を機に設備や技術、サプライチェーン、人材などトヨタが持つ自動車産業に関する資産の活用を前提にしてロケットを開発する。従来の宇宙業界の常識では成し得なかった開発や製造の体制を確立することを目指す。
ZEROは1段に9基、2段に1基と計10基のエンジンを備える2段式のロケット。エンジンシステムを構成する燃焼器やターボポンプは、インターステラ独自の技術と説明。特に、燃焼器に推進剤を送り込む「心臓」であるターボポンプは、ロケットで最も開発が難しい要素のひとつと言われ、国内で設計と製造の技術がある会社はインターステラを含めごくわずかという。
自動車トランスミッションの量産製造技術があり、以前から連携しているトヨタ自動車北海道やトヨタとインターステラは、初号機に向けた燃焼器やターボポンプを含むエンジン全般の製造に連携して取り組んでいく。原価低減や工期短縮のための工法開発も進め、高い品質と安定した生産体制を両立するとしている。
ZEROでは、燃料の液体バイオメタンと酸化剤の液体酸素を貯蔵する推進剤タンクに、強度が高い一方で高度な溶接技術が求められる特殊なアルミニウム合金を採用している。自社で設計し、製缶や試験などの主要工程を自社で行っているが、機体能力向上に向けた軽量化を目的とする新規工法開発と、高頻度打ち上げの実現に向けた原価低減、工期短縮に向けたサプライチェーン強化でも支援してもらう。
ZEROは、初号機打ち上げに向けて各コンポーネントの製造工程を並行して進めている。ロケット1機の製造には約10万点に及ぶ部品を管理、供給する必要がある。ここでも自動車業界の知見やノウハウを積極的に取り入れ、高頻度の打ち上げを実現するために生産体制全般の仕組みをトヨタと連携して構築する。

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インターステラ プレスリリース
