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NASA、月の水資源探査機「ルナ・トレイルブレイザー」運用を終了–打ち上げ翌日に通信途絶

2025.08.05 12:36

塚本直樹田中好伸(編集部)

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 米航空宇宙局(NASA)は月の水資源を調査する探査機「Lunar Trailblazer」(ルナ・トレイルブレイザー)の運用を米国時間7月31日に終了した。8月4日に発表された。

 Lunar Trailblazerは月面の水の高解像度マップを作成し、時間とともにどのように変化するのかを明らかにすることを目的としていた。このマップは、将来のロボットや有人による月探査、商業的利用を支援し、太陽系内の水循環の理解にも貢献するはずだった。

 同探査機は2月、米Space Exploration Technologies(SpaceX、スペースX)の「Falcon 9」ロケットで米Intuitive Machines(インテュイティブ・マシーンズ)の月着陸機「Athena」(アテナ)などと相乗りで打ち上げられた。Lunar Trailblazerは計画通りにロケットから分離し、月への飛行を開始したが、翌日に地上との通信が途絶した

 運用の終了が決定するまで、ミッションチームは双方向通信を再開することができず、探査機の完全な状態診断や飛行経路に維持するために必要な推進器(スラスター)の噴射操作ができなかった。断片的なデータによれば、太陽電池パネルが太陽に正しく向いておらず、バッテリーが枯渇したことが示唆されている。

 「NASAは、Lunar Trailblazerのようなハイリスク・ハイリターンなミッションに挑戦し、新しい科学のための革新的な方法を見つけ出そうとしている」とNASA 科学ミッション局 副局長 Nicky Fox(ニッキー・フォックス)氏は述べた。「期待通りの結果ではなかったが、Lunar Trailblazerの経験は将来の低コスト小型衛星が革新的な科学を行う際のリスクを低減するのに役立つ」

 Lunar TrailblazerはNASAの小型宇宙探査プログラム「SIMPLEx」の一環。重さが約200kgという探査機であり、本体には2枚の展開式の太陽光パネルを搭載している。高解像度揮発性・鉱物マッピング装置「High-resolution Volatiles and Minerals Moon Mapper(HVM3)」や月面熱マッピング装置「Lunar Thermal Mapper(LTM)」という2つの観測機器を搭載しており、さまざまな形の水の分布をマッピングする。

 月に水が存在することは知られているが、その形態や存在量、分布についてはほとんど知られていない。異なる形の水がどこに存在するのか、月表面の熱的特性がそれらの分布にどのように影響するのか、そして異なる形の水が時間とともにどのように変化するのかなどを調べることが目的だった。

Lunar Trailblazerイメージ図(出典:Lockheed Martin Space)
Lunar Trailblazerイメージ図(出典:Lockheed Martin Space)

関連情報
NASA発表
Lunar Trailblazerミッション概要

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