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トランプ政権が1500億円支出–軍用軌道試験機「X-37B」は何を狙っているのか

2025.07.15 15:27

塚本直樹田中好伸(編集部)

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 Trump(トランプ)政権の減税歳出法「一つの大きくて美しい法案」(One, Big Beautiful Bill Act:OBBBA)が成立した。同法には、米宇宙軍(USSF)が管理する軍事用宇宙機「X-37B」計画への10億ドル(約1475億円)の支出が含まれる。

 軌道試験機(Orbital Test Vehicle:OTV)計画とも呼ばれる、大部分が機密扱いとなっているX-37Bは、2024~2025年に7回目のミッションを実施。地球低軌道を434日間周回した後、3月に米カリフォルニア州のヴァンデンバーグ宇宙軍基地に着陸した。

 米国防総省で空軍長官広報室 宇宙担当広報副部長を務める米空軍大佐Lori Astroth(ロリ・アストロス)氏は、X-37Bについて「将来の再利用可能な宇宙機のための技術的リスクの低減、実験、運用コンセプトの開発を支援するものだ」と米メディアSpace.comの取材に述べている。「さまざまな実験を宇宙に輸送し地球に帰還させるための柔軟な宇宙試験プラットフォームとして機能している」

 しかし、X-37Bの「費用と予算に関する詳細は公表できない」(Astroth氏)。X-37Bのこれまでの飛行を振り返ると以下のようになる。

  • OTV-1:2010年4月22日~12月3日(飛行日数=225)
  • OTV-2:2011年3月5日~2012年6月16日(飛行日数=469)
  • OTV-3:2012年12月11日~2014年10月17日(飛行日数=675)
  • OTV-4:2015年5月20日~2017年5月7日(飛行日数=718)
  • OTV-5:2017年9月7日~2019年10月27日(飛行日数=780)
  • OTV-6:2020年5月17日~2022年11月12日(飛行日数=909)
  • OTV-7:2023年12月28日~2025年3月7日(飛行日数=434)

 無人で再使用型の宇宙往還機(スペースプレーン)であるX-37Bを製造した米Boeing(ボーイング)によれば、同機には初となる技術が採用されている。これには、軌道離脱や着陸機能をすべて自動化するために設計されたアビオニクス(電子機器)、完全な電気機械式の飛行制御とブレーキ(油圧で動く装置は搭載されていない)、軽量な複合材構造の採用、新世代の高温対応の翼前縁タイル、強化された一体型の繊維状耐酸化セラミック(Toughened Uni-piece Fibrous Refractory Oxidation-resistant Ceramic:TUFROC)タイル、先進的なコンフォーマル再利用可能断熱材(Conformal Reusable Insulation:CRI)ブランケットが含まれる。

 宇宙作戦部長の大将Chance Saltzman(チャンス・ソルツマン)氏によれば、米宇宙軍はX-37Bを「新技術を試すための軌道上テストベッドとして、また敵対国の同様のシステムをよりよく理解し、新しい訓練環境を設計するために活用している」と述べている。

スペースシャトルと似た形状のX-37B。全長は8.9m、全高は2.9m、翼幅は4.5m、重量は4990kg(出典:U.S. Space Force / Staff Sgt. Adam Shanks)
スペースシャトルと似た形状のX-37B。全長は8.9m、全高は2.9m、翼幅は4.5m、重量は4990kg(出典:U.S. Space Force / Staff Sgt. Adam Shanks)

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