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中国、宇宙ステーション「天宮」で新種の細菌を発見–宇宙環境に適応

2025.05.23 08:30

塚本直樹田中好伸(編集部)

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 中国の宇宙ステーション「天宮」(Tiangong)で新種の細菌「Niallia tiangongensis」(ニアリア・ティアンゴンエンシス)が発見された。3月に発表された学術誌「International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology」に論文が掲載されている

 Niallia tiangongensisは、ミッション「神舟15号(Shenzhou 15)」(2022年11月~2023年6月)で天宮の表面から採取されたサンプルから見つかった。この細菌は好気性かつ胞子を形成する棒状の細菌(桿菌)。天宮で新種の細菌が発見されたのは今回が初めて。

 発見された新種は、地上の土壌や廃棄物などに存在する細菌に最も近縁で、免疫力が低下した人に感染症や敗血症を引き起こす可能性がある。分析の結果、この細菌はCytobacillaceae(サイトバチルス科)のNiallia(ニアリア属)に属する新株であると判断された。

 この新種は軌道上の環境に適応した特徴をもっており、酸化ストレスに対する反応が高く、放射線による損傷修復を助ける独自のバイオフィルム形成能力を持っている。これは、宇宙空間という極限環境で生存するためのメカニズムが進化したことを示している。

 米メディアSpace.comによると、宇宙で新種が発見されるのは今回が初めてではないという。宇宙ステーションは比較的クリーンな環境であり、地上よりも高い放射線量にさらされているが、宇宙ステーションに出入りする宇宙飛行士には数兆個もの微生物が付着していると説明する。

 国際宇宙ステーション(ISS)からは、宇宙飛行士が火星で作物を育てるのに役立つ可能性のある細菌株を含む、さまざまな新しい細菌が特定されている。米航空宇宙局(NASA)のクリーンルームでも最近、これまで知られていなかった26種の細菌が発見されたという。

(出典:CMSE)
(出典:CMSE)

関連情報
International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology
Space.com

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