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NASA、天体物理学ミッション公募を1年延期–予算が不透明、3分の1に減額の可能性

2025.05.02 16:11

塚本直樹田中好伸(編集部)

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 米航空宇宙局(NASA)は米国時間4月29日、次回の天体物理学ミッションの公募を1年延期すると発表した。

 NASAは次回の「Small Explorer(SMEX)」プログラムのための公募通知(AO)の発行を少なくとも2026年4月まで延長すると通知した。このAOは2025年1月にドラフト版が公開され、2025年4月に発行される予定だった。

 NASAは延期の理由を公表していない。しかし、天体物理学の関係者の多くは、2026年会計年度のNASA予算案の発表に関連すると見ている。この予算案では、2024年度にNASAの天体物理学部門に割り当てられた15億ドル(約2200億円)から約3分の2が削減される見通しだ。

 SMEXは比較的小規模なミッション向けで、ドラフト版のAOによれば、打ち上げ以外の全ミッションフェーズにかかる費用上限は1億7000万ドル(約250億円)だ。NASAはドラフト版のAOで2031年5月までのミッションを打ち上げるというスケジュールを示していた。

 NASAの予算案の詳細は、間もなく公表される見込みだ。米メディアのSpaceNewsによれば、NASA惑星科学部門でディレクターを務めるLouise Prockter(ルイーズ・プロクター)氏は5月2日にも簡易版の予算が公表され、NASA全体の予算総額が提示されると述べた。正式な予算案の発表は5月末ごろになる見通しだ。

 2025年10月から始まる米連邦政府の2026年度予算について4月10日に米行政管理予算局(OMB)からNASAに送られた予算案の草案である「Passback」(パスバック)では、NASA全体の支出を約20%削減し、科学プログラムについては約50%もの削減を提案している。これにより、NASAの全体予算が約200億ドル(約2兆9000億円)に削減される見込みだ。

 行政機関はそれぞれの活動に必要とする予算をOMBに提出。行政機関からの予算要求をOMBが審査して通知するのがパスバック。パスバックはOMBからの回答であり、最終的な予算ではない。

 今回示されたパスバックでは、NASAの科学ミッション予算が約73億ドル(約1兆円)から約39億ドル(約5700億円)に減額される見込みだ。最大の打撃を受けるのは天体物理学部門で、2024年度には約15億ドル(約2200億円)だったのが2026年度には5億ドル(約726億円)未満に減額されることになる。

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SpaceNews

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